事業計画書は誰に見せる?提出先と目的から決める書き方

家族・金融機関・投資家で変わる、力の入れどころ

本記事は、ノルツ株式会社代表・原本 昌悟の実体験(取材で語られた内容)に基づいています。ホームページ制作で独立した自身の経験と、創業期の方に伴走してきた中で使っている考え方をまとめました。

この記事の要点

事業計画書は、書き始める前に「誰に何のために見せるか」を決めると迷いが減ります。提出先は大きく、家族への説明、金融機関への融資申請、投資家向けの3つ。そのうえで①背景のストーリー②市場や競合の分析③収支計画の3段階で組み立て、収支は売上より先に経費を固めます。最後は自分で通して読み、話せる状態まで持っていきます。

公開日 2026-11-03 執筆:原本 昌悟(ノルツ株式会社 代表取締役)

机の上でノートに事業計画の構成を書き出している日本人の男性

事業計画書は誰に見せるために書くのか?

最初に整理するのは提出先です。大きく分けると、家族への説明用、金融機関への融資申請用、投資家向けの3つ。どれを想定して書くかを先に決めると、どこに紙面を使うかが決まります。

事業計画書は、自分の頭の整理のためにも役立ちますが、多くの場合は「誰かに見せるもの」として書かれます。ノルツ株式会社代表・原本が創業期の方と事業計画書を考えるとき、最初に確認するのは目的と提出先です。

  • 家族への説明用:これから何をやるのか、暮らしにどう関わるのかを共有するため
  • 金融機関への融資申請用:創業融資などの申請にあたって事業の中身を伝えるため
  • 投資家向け:出資を検討してもらうために事業の見通しを示すため

同じ事業でも、相手が確かめたいことは同じではありません。だから「事業計画書の正解の形」を探すより、「今回は誰に向けて書くのか」を先に決めたほうが早く進みます。

独立を家族にどう共有するかについては、独立を家族に相談するときの伝え方でも触れています。

提出先によって、どこに力を入れて書けばいいのか?

事業計画書は、背景のストーリー・分析・収支計画という3つの要素でできています。提出先が変わっても要素そのものは変わりませんが、どこを厚く書くかの比重は変わります。

一般に、相手によって確かめたいことは異なります。家族は暮らしへの影響、金融機関は返済の見通し、投資家は事業の将来性に関心が向きやすい、という前提で紙面の配分を考えると組み立てやすくなります。

提出先相手が確かめたいこと(一般的な傾向)厚めに書く要素
家族何をやるのか、生活にどう関わるのか背景のストーリー+収支計画(特に経費)
金融機関事業として続く見通しがあるか収支計画(経費の根拠)+分析
投資家市場の中でどこまで伸びうるか分析(市場規模・競合・将来性)+背景のストーリー

重要なのは、どの提出先でも3つの要素を全部削らないことです。背景だけでも、数字だけでも、受け取る側は判断しづらくなります。比重を変える、という考え方で調整します。

金融機関との関わり方については、金融機関も民間企業。創業期に担当者と関係を築くと決めた理由もあわせてどうぞ。

事業計画書はフォーマットを探すところから始めていいのか?

フォーマットを使うこと自体は悪くありません。ただ、フォーマットに沿って綺麗に書くことよりも、何をやりたいのかが伝わることのほうが大事だと代表・原本は話しています。

従業員として働いていた人は、事業計画書そのものを見たことがないケースが多く、まずフォーマットを探すところから始めがちです。これはよくある状況で、枠があったほうが書き出しやすいのも事実です。

「事業計画書ってあまりフォーマットにこだわりすぎないほうがいいかな」(ノルツ株式会社代表・原本)

「フォーマットに沿って綺麗に書いてあることよりも、何をやりたいのかがちゃんと伝わることのほうが遥かに大事になります」(代表・原本)

さらに、やることが伝わるだけでは足りない、という見方もしています。

「やることが単純に伝わるんじゃなくて、そこに対して何でそれをやるのかとか、それに対しての熱量の部分ですね、そういったものがしっかり伝わるような計画書であったほうがいいんじゃないかな」(代表・原本)

つまり、フォーマットは「埋めるもの」ではなく「伝えたいことを載せる器」として使う。枠を先に見つけたなら、そこに自分の言葉を入れていけば十分です。創業計画書などの様式は公的機関のサイトでも公開されているとされていますが(2026年9月時点)、様式や記載項目は変わることがあるため、提出先の最新の公式情報を確認してください。

要素の分け方は、事業計画書の書き方:テンプレートに中身を入れる8つの要素でも整理しています。

事業計画書はどんな順番で組み立てればいいのか?

代表・原本が使っているのは、①背景のストーリー②数字での分析③収支計画、という3段階の組み立てです。共感→裏付け→お金の流れ、という順番で読み手の理解が積み上がります。

  1. ストーリー(背景):いつからその分野に携わっていたか、どういう経緯で独立したか、社会のどんな困りごとを解決してどんな社会を目指したいか。ここで共感を生み出します。
  2. 分析(数字での裏付け):マーケットサイズ(市場規模、事業者数、取れそうなシェア)、競合他社との比較、将来の伸び方。「この事業をやって大丈夫」という部分を数字で示します。
  3. 収支計画:数字の部分。売上が一方的に伸びる前提は避け、先に経費を固めます。

この順番にしているのは、背景だけでは判断材料にならないからです。

「じゃあ背景書いたから納得してもらえるかっていうのは、またちょっと別の話になります」(代表・原本)

「この事業をやって本当に大丈夫なんですよっていう部分は、数字を使って見せていく必要があるんじゃないかな」(代表・原本)

書き出しに迷ったら、1→2→3の順に、まずは箇条書きでそれぞれの材料を並べてみる。文章にするのはその後で間に合います。

資料を手元に置いて説明する日本人と、向かいで話を聞く相手の打ち合わせの様子

背景のストーリーはどこまで書けばいいのか?

事業内容だけを書いても、なぜそれをやるのかは伝わりません。その分野にいつから携わっていたか、どういう経緯で独立したか、どんな困りごとを解決して何を目指すのか。この3点を書くと背景になります。

代表・原本は最初にホームページ制作で独立しました。その経験から、事業内容の一行だけでは伝わらないと話しています。

「ホームページ制作やりますだけ事業計画書に書いてあってもそれはしょうがない話なので」(代表・原本)

背景に書く材料は、おおむね次の3つです。

  • 経歴の接点:いつからその分野に携わってきたのか
  • 独立の経緯:どういう流れで自分でやることにしたのか
  • 目指す状態:社会のどんな困りごとを解決して、どんな社会にしたいのか

ここは数字で証明する場所ではなく、読み手に「この人がやる理由」が伝わればいい場所です。長さより、やりたいことと、なぜやるのかが一本につながっているかを見ます。

自分の経歴の材料が出てこないときは、起業・独立前のスキル棚卸しのように、まず書き出すところから始めると進みます。

市場や競合の分析はどの手法を使えばいいのか?

分析手法はたくさんありますが、全部使う必要はありません。代表・原本が例として挙げているのは3C分析とクロスSWOT分析で、自分の事業に合うものを選んで使えばいいという考え方です。

分析のパートで示したいのは、「この事業をやって大丈夫」と言える根拠です。材料としては次のようなものがあります。

  • マーケットサイズ:市場規模、事業者数、自分が取れそうなシェア
  • 競合他社との比較:3C分析などを使った整理
  • 将来の伸び方:クロスSWOT分析などを使った見立て

「何でもかんでも入れる必要はなくてですね、自分の事業に合ったものを入れればいいのかなという風には思っております」(代表・原本)

フレームワークを並べるほど説得力が増すわけではありません。手法の名前を増やすより、1つか2つの枠で自分の事業の立ち位置をはっきり書いたほうが読み手に届きます。選び方の目安は、「その枠で整理すると、自分の事業の強みと伸びしろが説明できるか」です。

収支計画は売上と経費のどちらから固めるのか?

先に固めるのは経費です。創業直後の売上予測は希望的観測になりやすい一方、経費は事務所の形態や雇用の有無から積み上げられるため、数字の土台として扱えます。

「収支計画書く時に一番最初大事になるかなと思っているのは支出の部分です。経費いくらかかるのかです」(代表・原本)

「売上に関しては半年後1年後っていうのはあくまで机上の空論というか、希望的観測に過ぎない部分があると思いますんで」(代表・原本)

経費は、次のように条件が決まれば金額の見当がつきます。

  1. 事務所の形態を決める:自宅、シェアオフィス、賃貸など。形態が決まれば家賃が決まります。
  2. 人を雇うかどうかを決める:雇うなら人件費が決まります。
  3. 月々の動き方から残りを置く:水道光熱費、営業経費なども、月の動き方から大体想像がつきます。

売上の見せ方についても、代表・原本はこう話しています。

「収支計画のほうも売上だけものすごい上がっていくよみたいな見せ方をしてもあんまり現実味がないと思うんですね、創業直後の収支計画で」(代表・原本)

経費が固まると、「最低いくら売上が必要か」が自動的に見えます。そこから半年後・1年後の数字を置いていくと、現実味のある収支計画になります。経費側の積み上げ方は、独立の資金はいくら必要?資金繰り表は経費から組み立てるで具体的に扱っています。

書き終えたあと、最後に確認することは何か?

自分で頭から最後まで通して読むことです。事業計画書は話すこととセットになるため、それを使ってプレゼンができるかどうかまで確認します。

「最後に自分自身でも頭から最後までちゃんと読んで、それで事業計画書って話すのとセットになりますので、それを使ってちゃんとプレゼンができるかどうか」(代表・原本)

提出して終わりではなく、面談や説明の場で自分の言葉で語るところまでが事業計画書の役割です。通し読みのときに確認したいのは次の点です。

  • 背景・分析・収支計画が、途中で別の話になっていないか
  • 数字の根拠を、口頭で説明できる状態になっているか
  • 提出先が知りたいことに、どのページで答えているか言えるか

読みながら詰まった箇所が、そのまま面談で聞かれて困る箇所になります。詰まった場所に印をつけて、材料を足すか、書き方を変える。この往復をしておくと、当日の受け答えが安定します。

ノルツの起業支援では、月額の伴走の中で事業計画書の組み立てと、それを使って話す準備まで一緒に進めています。提出先の整理から迷っている段階でも、LINEかお問い合わせフォームから気軽にご相談ください。

よくある質問

事業計画書は提出先ごとに作り直したほうがいいですか?

ゼロから作り直す必要はありません。背景のストーリー・分析・収支計画という3つの要素は共通で、提出先に応じてどこを厚く書くかの比重を変える、という考え方で調整できます。まずは1本を丁寧に作り、提出先に合わせて強弱をつけるのが現実的です。

決まったフォーマットがないと書けません。どうすればいいですか?

フォーマットを使うこと自体は問題ありません。公的機関のサイトでも創業計画書などの様式が公開されているとされています(2026年9月時点。様式は変わることがあるため、提出先の最新の公式情報をご確認ください)。大事なのは枠を埋めることではなく、何をやりたいのか、なぜそれをやるのかが伝わる中身を入れることです。

分析のフレームワークはいくつ使うべきですか?

数を増やすことが目的ではありません。ノルツ株式会社代表・原本は3C分析やクロスSWOT分析を例に挙げつつ、「何でもかんでも入れる必要はなくて、自分の事業に合ったものを入れればいい」と話しています。自分の事業の立ち位置と伸びしろが説明できる枠を1〜2つ選べば十分です。

売上予測はどのくらい先まで書けばいいですか?

半年後・1年後という時点で置くのが一つの目安です。ただし創業直後の売上予測は希望的観測になりやすいため、先に経費を固めて「最低いくら必要か」を出してから、売上の数字を置く順番にすると現実味が出ます。

参考・出典

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