事業計画書の書き方:テンプレートに中身を入れる8つの要素

穴埋めで終わらせないための構成要素とフレームワークの使い方

本記事は、ノルツ株式会社代表・原本 昌悟の実体験と、取材で語られた考え方に基づいて構成しています。フレームワークの一般的な定義と、創業期の計画書に何を入れるかという実務的な整理を分けて書いています。

この記事の要点

事業計画書は、テンプレートの枠を借りつつ中身を自分の言葉で入れていくものです。入れる要素は、起業の背景と原体験、自分にできること、マーケット規模(TAM・SAM・SOM)、商流図、3C分析・SWOT分析、PEST/PESTLE分析、収益モデル、資金繰り表の8つ。営業資料や説明資料を作る感覚で書くと、読み手に伝わる計画書になります。

公開日 2026-10-05 執筆:原本 昌悟(ノルツ株式会社 代表取締役)

机の上でノートに事業計画の構成を手書きで書き出している日本人の手元

事業計画書はテンプレートを埋めるだけでいい?

テンプレートは構成の骨組みとして使う分には便利です。ただし枠を埋める作業として進めると、書き手の熱量が反映されにくくなります。営業資料・説明資料を作る感覚で、中身を自分の言葉に置き換えていくのが実務的なやり方です。

創業時の事業計画書は、検索すれば様式がいくらでも見つかります。金融機関や支援機関が公開している書式もあり、項目立てを参考にすること自体は合理的です。問題は、項目を「埋めるべき空欄」として扱ってしまうと、書類としては整っていても、読んだ人の判断材料にならないことです。

ノルツ株式会社代表・原本は、取材でこう話しています。

事業計画書って例えばネット上からテンプレートみたいなのをダウンロードして書いてしまった場合、何というかあんまりそこに熱が入らないと私自身は思っています。もう本当に営業資料、説明資料を作るような感覚でちゃんとそこに熱を入れる、思いを入れる。

営業資料であれば、誰に・何を・どういう順番で伝えれば納得してもらえるかを考えて作るはずです。事業計画書も読み手がいる書類です。金融機関の担当者、支援機関の相談員、一緒に組む人、そして半年後の自分。その人たちが読んで判断できる状態になっているかを基準にすると、書く内容は自然と具体的になります。

テンプレートの使い方を変える

  • 項目名は借りる(抜け漏れのチェックリストとして使う)
  • 各項目の説明文は自分の事業の言葉に書き換える
  • 埋まらない項目は空欄のままにせず、「なぜ今は書けないか」をメモに残す

なお、公的な創業融資の申込書式(例:日本政策金融公庫の創業計画書)は公式サイトで公開されています(2026年9月時点)。様式や必要書類は変わることがあるため、提出先に出すものは最新の公式情報で確認してください。

事業計画書の最初に書くべき要素は何か?

最初に置くのは、起業・独立の背景となる文脈と、自分の原体験です。そのうえで「自分にできること」を並べます。この二つが揃うと、以降の数字や分析に意味が出ます。

事業計画書の冒頭でいきなり市場規模や売上予測を出すと、読み手には「なぜこの人がこの事業をやるのか」が分かりません。先に、どういう経緯でこの事業に行き着いたのか、自分のどんな経験が元になっているのかを書きます。

原体験の掘り下げについて、代表・原本は取材でこう述べています。

実際にはもう自分の人生全部振り返るぐらい考え抜いた方がいいと思います。

深掘りの手がかりは、自分が困ってきたこと、解決したいと思っている社会課題、そして本心からやりたいことです。「今のままでは不安だから」という動機は出発点としてあっていいのですが、計画書に書くのは「何を成し遂げたいか」「誰のどんな課題を解決したいか」のほうです。

背景・原体験のパートに入れる項目

  1. この事業に行き着いた経緯(時系列で3〜5行)
  2. 自分が実際に困った、または身近で見てきた課題
  3. その課題を自分が扱う理由(経験・立場・関心)
  4. 自分にできること(専門スキルだけでなく、人の話を深く聞く力や体力のような要素も含めて棚卸しする)

「自分にできること」は、資格や職歴のような分かりやすいスキルだけで書くと取りこぼしが出ます。対人力や行動量のような要素も、事業の実現可能性を支える材料として書いておくと、計画書の説得力が変わります。

マーケット規模はTAM・SAM・SOMでどう書き分ける?

市場規模は、TAM(獲得しうる最大の市場)、SAM(その中で自社が対象にできる市場)、SOM(現実的に取りにいける市場)の3層で整理します。大きい数字から順に絞り込むことで、狙う範囲と根拠が同時に示せます。

市場規模をひとつの数字だけで書くと、「大きすぎて自分に関係がない数字」か「小さすぎて事業に見えない数字」のどちらかになりがちです。3層に分けると、どこまでが外部データで、どこからが自分の仮説かがはっきりします。

層一般的な意味創業時の書き方の例
TAMその事業領域全体の最大市場規模公的統計や業界団体の公開データを出典付きで引用する
SAM自社の商品・サービスが対象にできる範囲地域・業種・企業規模などの条件でTAMを絞る
SOM現実的に獲得を見込む範囲自分の営業力・稼働量・販路から逆算した到達可能数

創業期は、SOMを「何社×単価×頻度」のように、自分が動いて届く範囲の計算式で書けると実態に近づきます。TAMとSAMは外部データ、SOMは自分の仮説、という役割分担で書くと、読み手も検証しやすくなります。

市場データの出典には、中小企業庁や各省庁が公開している統計を使うのが一般的です。数値は更新されるため、引用時点を明記し、最新の公式情報を確認してください(2026年9月時点)。

事業モデルは商流図でどう表せばいい?

事業モデルは、文章だけでなく商流図としてフローチャート化します。仕入れ元から自社、売り先までの流れと、お金とモノ(サービス)の向きを一枚に描くと、関係者が同じ理解に立てます。

商流図は、誰から何を仕入れ、誰に何を売り、お金がどの順番でどちらに流れるかを図にしたものです。ひとり社長や小規模事業でも、外注先や紹介元が入ると流れは複雑になります。図にしておくと、説明の手間が減り、抜けている登場人物にも気づけます。

商流図を描く手順

  1. 登場人物を全部書き出す(仕入れ先、外注先、自社、紹介元、顧客、プラットフォームなど)
  2. モノ・サービスが動く矢印を引く
  3. お金が動く矢印を別の線で引く(向きと、誰が誰に払うかを明記)
  4. 各矢印に金額の考え方(単価・手数料率・支払いサイト)を添える
  5. 矢印が一本も付いていない登場人物がいないかを確認する

お金の矢印を分けて描くのがポイントです。サービスは自社が提供しているのに、入金は別の会社経由という構造は珍しくありません。その場合、入金までの期間が資金繰りに直結します。商流図は、後ろの資金繰り表とつなげて見ると効果が出ます。

ホワイトボードに事業の流れを図で描きながら考えている日本人

3C分析・SWOT分析は事業計画書のどこで使う?

3C分析とSWOT分析は、自社の立ち位置を説明するパートで使います。3Cで市場・競合・自社を並べて整理し、SWOTで強み・弱み・機会・脅威に落とすと、「なぜ自分がこの市場で勝負するのか」が言葉になります。

3C分析は、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)の3つの視点で事業環境を整理する一般的なフレームワークです。SWOT分析は、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4象限で整理します。どちらも創業計画書で広く使われています。

創業期に書きやすい順番

  1. Customer:誰が、どんな状況で、いくら払って何を解決したいのか
  2. Competitor:顧客が自社以外に選ぶ手段(同業だけでなく「自分でやる」「何もしない」も含める)
  3. Company:自分にできること、使える時間、持っている関係性
  4. この3つを見比べて、SWOTの4象限に振り分ける

SWOTは埋めること自体が目的になりやすい枠です。4象限を埋めたあとに、「強み×機会でまず何をするか」「弱み×脅威に対してどう備えるか」を一文ずつ書き足すと、計画書の次のページ(アクションプラン)につながります。

競合の欄は、無理に批判的に書く必要はありません。顧客から見た選択肢を並べ、その中で自分が選ばれる理由を書く、という書き方のほうが実務では使えます。

PEST・PESTLE分析で将来予測はどう書く?

現状分析と将来予測のパートでは、PEST分析(政治・経済・社会・技術)やPESTLE分析(これに法律・環境を加えたもの)を使います。自分でコントロールできない外部環境を並べ、事業にどう効くかを一行ずつ書きます。

PEST分析は、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの外部環境要因から事業環境を見る一般的なフレームワークです。PESTLE分析は、ここにLegal(法律)とEnvironment(環境)を加えた6要素で整理します。

書き方の型

  • 要因を挙げるだけで終えず、「だから自社にはこう効く」を必ずセットで書く
  • 追い風と向かい風を両方書く(都合のいい要因だけ並べると読み手に伝わらない)
  • 時間軸を入れる(今起きていること/1〜3年で起きそうなこと)
  • 情報源と参照時点を添える

外部環境は、ぱっと見の印象と実際の数字が違うことがあります。印象だけで「伸びている市場」「縮んでいる市場」と書かず、公開データで裏を取ってから書くと、計画書としての強度が上がります。制度や補助金に関わる要因を入れる場合は、内容が変わることを前提に、参照した時点を明記し、最新の公募要領や公式情報で確認してください(2026年9月時点)。

収益モデルと資金繰り表は何を基準に作る?

売上は開始前には正確に読めないため仮説ベースで構いません。一方、出費はかなり明確に見積もれます。経費の精度を上げることが、資金繰り表の精度を上げる近道です。

収益モデルに書くのは、現在の手持ち資金、月々の経費、見込み収入の3つです。このうち見込み収入は、始める前に正確に出すことはできません。代表・原本は取材でこう話しています。

売上いくら上がりますかっていうのはスタートする前には正直分かりませんので、そこは仮説ベースでいいんですけれども、その出費の方がいくらかかるのかっていうのは、かなり明確に分かると思うんですね。

半年後の家賃、1年後の電気代のように、先の時点でかかる費用は今から見積もれます。この「見積もれる側」を丁寧に積み上げると、資金繰り表が意思決定に使える表になります。

資金繰り表を作る順番

  1. 現在の手持ち資金を書き出す
  2. 固定費を月単位で並べる(家賃、通信、ツール、保険など)
  3. 変動費と初期投資を時期を入れて並べる
  4. 売上は仮説として、低め・標準・高めの複数パターンで置く
  5. 各月の残高を計算し、いつ資金が一番薄くなるかを確認する

この表ができると、判断の問いが具体的になります。代表・原本の言葉で言えば、「いつまでにいくら稼がないといけないのか、あるいは半年ぐらい余力を持つためにはいくら準備をしないといけないのか」。この二つに数字で答えられる状態が、計画書としてのゴールのひとつです。

商流図で入金の流れを描いておくと、売上が立つ月と入金される月のズレも表に反映できます。売上計上と入金のタイミングを分けて書くだけで、資金繰りの読み違いは減らせます。

書き上げたあと、最初にやることは何?

書き上げた事業計画書は、人に説明してみるのが次の一手です。口頭で説明して伝わらない箇所が、書き直すべき箇所になります。説明資料として使えるかどうかが、実用性の判断基準です。

事業計画書は、提出して終わる書類ではなく、説明に使う資料です。営業資料・説明資料を作る感覚で書くという考え方は、完成後の使い方にもそのまま当てはまります。誰かに10分で説明してみて、質問が集中した箇所を書き直す。これを数回まわすと、計画書は実際に使える状態に近づきます。

提出・説明の前に見直すチェックリスト

  • 背景と原体験が、自分の言葉で書かれているか
  • 自分にできることが、専門スキル以外も含めて棚卸しされているか
  • 市場規模がTAM・SAM・SOMの3層で、出典と仮説が分かれて書かれているか
  • 商流図で、モノの流れとお金の流れが別に描かれているか
  • 3C・SWOTが、埋めただけでなく打ち手につながっているか
  • PEST/PESTLEに、追い風と向かい風の両方が入っているか
  • 資金繰り表で、残高が一番薄くなる月が分かるか
  • 「いつまでにいくら必要か」に数字で答えられるか

全部を一度に完成させる必要はありません。書ける項目から書き、埋まらない項目は「何が分かれば書けるか」をメモに残して進めると、調べる順番も決まります。

ノルツの起業支援では、この計画書づくりを単発の作業代行ではなく、毎月伴走しながら一緒に考える形で支援しています。書き始めたものを見せながら相談したい方は、LINEまたはお問い合わせフォームからご連絡ください。

よくある質問

事業計画書のテンプレートは使ってもいいですか?

項目の抜け漏れを防ぐチェックリストとして使うのは有効です。ノルツ株式会社代表・原本は、テンプレートをダウンロードして埋めるだけだと熱が入りにくいと述べたうえで、営業資料・説明資料を作る感覚で中身を書くことをすすめています。枠は借りて、文章は自分の事業の言葉に置き換えるのが実務的です。

事業計画書に入れる要素は最低限どれですか?

この記事で整理している要素は8つです。起業の背景と原体験、自分にできること、マーケット規模(TAM・SAM・SOM)、事業モデル(商流図)、3C分析・SWOT分析、現状分析と将来予測(PEST分析・PESTLE分析)、収益モデル(手持ち資金・月々の経費・見込み収入)、資金繰り表。すべてを一度に完成させる必要はなく、書ける項目から埋めていく進め方で構いません。

売上予測はどこまで正確に書くべきですか?

開始前に売上を正確に読むことはできないため、仮説ベースで構いません。一方で出費はかなり明確に見積もれます。半年後の家賃や1年後の電気代のように先の費用から積み上げ、売上は低め・標準・高めの複数パターンで置くと、資金繰り表が判断に使える表になります。

創業融資の申込書式はどこで確認できますか?

公的な創業融資の申込書式(例:日本政策金融公庫の創業計画書)は、各機関の公式サイトで公開されています(2026年9月時点)。様式や必要書類、要件は変わることがあるため、提出前に必ず最新の公式情報を確認し、不明点は提出先や専門家に相談してください。

参考・出典

関連記事

起業・独立前のスキル棚卸し。専門スキル以外に書き出したいこと
脱サラで独立を迷うときの4つの軸と、決断の前に考えること
ビジネスモデルはスケールしても成り立つか?始める前の事前チェック

LINEで無料相談する ご利用の流れを見る

← shiftへ戻る