独立して最初に悩むことのひとつが、自分の仕事にいくらの値段をつけるかです。安くすれば売れるわけでも、相場どおりにすれば売れるわけでもありません。
このカテゴリでは、生活費から逆算する価格の決め方、販路によって変わる適正価格、無料・格安で受けるときのルール、補助金を使うかどうかの判断などをまとめています。いずれも原本が実際に試した数字をもとにしています。
独立して最初に悩むことのひとつが、自分の仕事にいくらの値段をつけるかです。安くすれば売れるわけでも、相場どおりにすれば売れるわけでもありません。
このカテゴリでは、生活費から逆算する価格の決め方、販路によって変わる適正価格、無料・格安で受けるときのルール、補助金を使うかどうかの判断などをまとめています。いずれも原本が実際に試した数字をもとにしています。
値段の決め方には、原価から決める、相場から決める、まったく新しいものなら提供価値から決める、という3つの考え方があります。ただ一人起業では、その前に「この値段で自分が暮らしていけるか」を確かめておきたいところです。
代表・原本が創業時に試したのは、生活費からの逆算でした。1人あたり月50万円で生活できると置き、活動費や仕入れを加えて月100万円が必要なら、1件10万円で月10本。次に「10本取れるか」を考え、厳しければ1件20万円・月5本のように単価を上げ、余裕があれば下げて数で稼ぐ方向も検討します。
コンサルティングや制作のような無形サービスは、人件費を基準にするのが現実的です。日給を5万円〜10万円のように決めておき、案件にかかる日数を掛ければ概算が出ます。時給は最低でも5,000円〜1万円。2,000円で計算すると事業はすぐ行き詰まります。
単発で終わる仕事はしっかりした金額を取り、継続につながる相手なら多少安めでも受ける。無形商材は定価を高めに置いて値引きできる形に。製品販売は原価や在庫が絡むので、料金体系を先に作っておきます。
代表・原本はウェブ制作で独立した直後、値決めで二度つまずきました。会社員時代の勤務先はホームページ1本をおよそ200万円前後で受注していましたが、それはデザイナーとコーダーの分業があってこその価格。一人で作る分、質が1ランク落ちると考えて50万〜100万円に設定したものの、売れませんでした。
次に、規模の違う案件を矛盾なく説明できるよう、基本料金20万円+1ページ2万円の単価制に変えます。10ページなら40万円。説明はしやすくなりましたが、やはり売れません。
原因は価格ではなく、相手でした。値段を提示していたのは交流会で知り合った人たちで、ホームページに数十万円を出す予算も切迫したニーズもなかったのです。一方、広告代理店経由の案件には、代理店側で400万〜500万円を取るものもありました。同じ制作物でも、届く先で成立する金額はまるで違います。
ここから見えた値決めの順番は、その金額を出せる相手を先に決める、その相手への届け方を設計する、その販路で成立する価格帯を調べる、説明できる料金体系に落とす、初期費用0円や分割など支払いのハードルを崩す入り口を用意する、の5つ。価格から考え始めないことが要点です。
代表・原本は独立して数年経った頃、経営者の会の「仲間内だから安くやってよ」という空気に応え続けました。他社事業のウェブ周りの手伝い、ほぼ無料で参加できる交流会の主催、会の事務局的なタスク。一つひとつは小さな判断でも、束になると新規獲得のための営業時間がなくなっていきました。
安く受けると、相手の要望はむしろ増えます。有料なら追加の売上につながる嬉しいニーズが、無料という条件ではボランティアになる。現象は同じでも、条件によって結果は正反対です。
それでもギバーであること自体は正しい、というのが代表・原本の考えです。ギバーとボランティアの違いは、範囲を決めているのが自分か相手か。ギバーは与える範囲を自分で決め、育った関係や機会が事業に返ってきます。
線の引き方は5つあります。その時間で本来やるべき営業活動を先に書き出す。与える範囲を「この1ページの相談に1時間」のように数量で決める。期限を必ず付ける。「これもやって」が来たら、範囲外は有償として見積もる。事務局的な役割は総量で判断する。
与えることをやめる必要はありません。範囲を相手に決めさせなければ、ギバーでいながらリソースも残ります。
無料で提供していたサービスに値段をつけたとき、代表・原本のもとから、無料のときにいろいろ頼んでいた人たちが一斉に離れました。相手が薄情だったからではありません。中身が同じでも、無料と有料は相手にとって「まるで別の条件」に映るからです。100円が120円になるのとは、心理的な意味が違います。
振り返って気づいたのは、無料で提供し続けること自体が、相手に「この人はボランティアでやってくれる」と思わせていたということ。もともとギバーの人でも、そう認識するのは自然な反応です。代表・原本はこれを「相手を定価に教育してしまった」と表現しています。
だからこそ、無償・格安で始めるときは、期限を切る、範囲と条件をつける、そのうえで「それでも一緒にやりますか」と合意してから始める。この3つを最初に済ませておくと、有料化の話もしやすくなります。
価格設計の前提は、値上げは難しいということ。あとから上げるつもりで安くするのではなく、最初から「これで続けられるか」で値段を決めます。値上げは、価格ではなく中身でつながっている相手を教えてくれる機会でもあります。残ってくれた人に丁寧に向き合うほうが、事業は健やかに続きます。
起業すると、補助金・助成金・融資・投資など、お金が絡む話を持ちかけられる機会が増えます。代表・原本は、相手を100%見抜く方法はないという前提に立ったうえで、判断の軸を3つ持っておくことを勧めています。
1つ目は、ファクトと数字で確かめること。資料の数字が「見込み」「想定」を前提にした仮説なのか、契約書に明記された責任を伴うものなのかを読み分けます。同じ100万円でも、重みはまったく違います。相手がどれだけ時間を使い、自分から動いてくれたかという行動の数字も判断材料です。
2つ目は、自分の話ばかりする人に注意すること。こちらの状況には関心を示さず、実績や儲かる話ばかりが続くなら、一度立ち止まります。会話の「聞く・話す」のバランスは相手の姿勢を映します。
3つ目は、お金が直接絡む話ほど慎重になること。期待が膨らみやすく仕組みも複雑なので、警戒心を最大に上げて臨みます。
サインが重なったら、その場で契約や振り込みをせずに持ち帰り、信頼できる第三者に数字と条件を見てもらう。人を疑うためではなく、限られた時間とお金を信頼できる相手に使うための、守りの技術です。
代表・原本は創業期、交流会などで耳にした「補助金は国からお金がもらえる」という空気に押されて、予定していた展示会の出展費用に小規模事業者持続化補助金を申請しました。
経費はおよそ20万円、補助率は約3分の2で、戻りは十数万円。ところが実績報告で資料や写真、証憑を集める作業に不慣れで、受け取るまでに合計およそ2週間かかりました。当時この補助金には経費75万円に対して50万円ほどが戻る枠があり、それを活かせない小額申請だったのです。申請から実績報告までの手間は補助額が小さくてもあまり変わらないため、小額ほど割が悪くなります。
補助金は、国が掲げる方向に沿って事業を進める人の経費の一部を補助する制度で、基本は後払い。一度は全額を自分で出すことになります。
検討する前には3つを自問します。その経費は補助金がなくても使う予定だったか。枠を活かしきれる規模か。申請と報告にかかる時間を本業に使ったら、何が前に進むか。
創業期に足りないのは、お金よりも時間と集中だったというのが代表・原本の実感です。比べたうえで、それでも補助金の価値が大きいと言い切れるなら、堂々と申請すればいい。
補助金には、申請から実施、実績報告までいくつもの期限があります。代表・原本は、補助金の期限が迫る中で「外注しなきゃ」と発注したことがあります。成果物はとても良いものに仕上がりましたが、振り返ると「もっと明確な目的を持って作ればよかった」という反省が残りました。
期限が近づくと、発注の起点が「達成したいこと」から「迫る締め切り」にすり替わりやすくなります。すると、何を基準に発注内容を決め、成果物を評価するのかが曖昧なまま進んでしまう。良い成果物を得ることと、正しい判断で発注することは別の話でした。
いま代表・原本が発注前に意識している手順は4つです。達成したいことを「〇〇を実現するために発注する」という一文で書き出す。その一文の主語が期限になっていないか確かめる。成果物の合格基準を、期限より先に決めておく。発注後の振り返りも、目的に照らして行う。
期限は「いつまでに動くか」を決めるためだけに使い、「何のために動くか」は先に自分の言葉で決めておきます。自分でできないことや手が回らない部分を外注するのは、一人社長にとって自然な選択。本当に必要なものを、補助金も活用しながら外注する。この順番なら、期限は味方になります。