会社員のうちにやる独立準備|今の会社がうまくいく理由の分析

勤務先を分析対象として見る、在職中の準備のしかた

本記事は、ノルツ株式会社代表・原本 昌悟の実体験(取材で語られた内容)に基づいて構成しています。発言はインタビューでの原本の言葉をそのまま引用しています。

この記事の要点

独立前の会社員ができる準備のひとつが、今の会社が「なぜうまくいっているのか」の分析です。顧客は誰か、なぜ選ばれているか、利益はどこで出ているか、問い合わせはどこから来るかを書き出し、上司・人事・社長に理念や成功要因を直接聞く。給料が毎月払われ続けているのは、それだけの事業が成立している証拠で、身近な教材になります。独立したい時期を決め、そこから逆算して在職中に動くと準備が進みます。

公開日 2026-11-05 執筆:原本 昌悟(ノルツ株式会社 代表取締役)

オフィスのデスクでノートに書き出しながら考える日本人の会社員

独立の準備として、今の会社を分析するのはなぜ有効なのか?

今働いている会社は、実際に売上を立て、毎月給料を払い続けている事業の実物だからです。ノルツ株式会社代表・原本は、会社員でいることを「安定した給料を払い続けられるだけの事業を作り上げた証」と捉え、独立を視野に入れるなら今の会社を分析対象として見ることを勧めています。

独立前の準備というと、事業計画やスキルの棚卸しが思い浮かびやすいものです。ただ、会社員の立場には、ほかの人が簡単には手に入れられない材料があります。すでに回っている事業の中に、毎日いるという状態です。

「会社員は安定している、安定して収入得られてるって本当素晴らしいことで、安定した給料を払い続けることができるだけの素晴らしい事業を作り上げたっていうことでもあるんですよね。」(ノルツ株式会社代表・原本)

給料が毎月振り込まれているという事実の裏側には、商品があり、顧客がいて、受注から入金までの流れがあり、固定費を上回る粗利が出ています。独立後に自分で一から組み立てることになるものが、目の前でひととおり動いているということです。

代表・原本は、独立を考える人がこの分析を十分に行わないまま判断しがちだという問題意識を語っています。今の会社を「勤め先」としてだけ見るか、「分析対象」としても見るかで、在職中に得られる情報量は変わります。立場を変えずに、見方だけを変えるところから始められます。

今の会社の「うまくいっている理由」は、どこを見れば分かるのか?

自分の担当業務の外側にある、顧客・選ばれる理由・利益の出どころ・集客経路を順に書き出していくと輪郭が見えます。社内資料や日々のやりとりから拾える項目が多く、特別な権限がなくても着手できます。

分析といっても、最初から精密なものを作る必要はありません。次の項目を、分かる範囲で言葉にしていくところから始められます。

見る項目書き出す内容
顧客どんな会社・どんな人が買っているか。新規と既存の比率はどうか
選ばれる理由競合ではなく自社が選ばれるとき、決め手になっている要素は何か
利益の出どころ売上が大きい商材と、利益率が高い商材は同じか違うか
集客経路問い合わせや引き合いは、紹介・営業・Web・既存顧客のどこから来るか
続く仕組み一度きりで終わらず、取引が続いている理由は何か
人と体制どの業務に人が多く割かれているか。外注している範囲はどこか

ポイントは、自分の担当範囲の外に目を向けることです。制作や開発の担当なら営業の受注プロセスを、営業なら見積もりの原価構成を見る。自分の持ち場だけを見ていると、事業全体がなぜ成立しているかは見えにくいままです。

この視点は、独立後にもそのまま使えます。自分の事業について「なぜうちが選ばれているのか」を考える習慣は、商品の磨き方や値付けの判断につながります。独立前のスキルの整理については起業・独立前のスキル棚卸しも合わせて参考にしてください。

上司・人事・社長には何をどう質問すればいいのか?

理念、創業の経緯、うまくいった要因、顧客が自社を選ぶ理由を、積極的に質問していくやり方です。代表・原本は、独立も視野に入れているなら遠慮して聞かないよりも、踏み込んで聞いたほうがいいという考え方を語っています。

資料を読むだけでは分からないことは、人に聞くのが早い。代表・原本が挙げているのは、上司・人事・社長といった立場の人に、会社の理念や成功要因を積極的に質問するという行動です。

「独立するのもね、視野に入っているんだったらクビ切られてもいいじゃないですか。」(ノルツ株式会社代表・原本)

これは強引に振る舞うという話ではなく、遠慮して質問を飲み込む理由がもう一つ減る、という受け止め方ができる言葉です。聞きにくいと感じていた質問も、学ぶ姿勢として出せば受け取られ方は変わります。質問の順番としては、次のような流れが組み立てやすいです。

  1. 会社の理念やミッションが、どういう背景で言葉になったのかを聞く
  2. 創業時にどんな事業から始め、どこで今の形になったのかを聞く
  3. 伸びた時期に何が効いたと見ているか、本人の分析を聞く
  4. 顧客が自社を選んでいる理由を、担当者の肌感覚で聞く
  5. 今いちばん時間とお金をかけている領域はどこかを聞く

聞いた内容は、その日のうちにメモに残していくと後から使えます。独立後に自分で判断するとき、手元にあるのは教科書の一般論ではなく、現場で聞いた具体的な言葉のほうです。

会議室で向かい合って話す二人の日本人のビジネスパーソン

分析したことを、自分の事業にどう置き換えるのか?

会社でうまくいっている要素のうち、どれが会社の規模や歴史によるもので、どれが一人でも再現できるものかを仕分けます。再現できない部分が見えると、独立後に自分が補う必要のある場所がはっきりします。

今の会社の成功要因をそのまま持ち出せるわけではありません。だからこそ、仕分けに意味があります。

  • 看板で成立している部分:会社名や実績があるから入れている商談、与信、信用
  • 仕組みで成立している部分:集客経路、見積もりの型、契約から入金までの流れ
  • 人で成立している部分:担当者の関係性、提案力、技術

看板の部分は、独立直後には使えません。そこをどう補うかが準備の論点になります。仕組みの部分は、規模を小さくすれば一人でも組み直せます。人の部分は、自分が持っているものと、持っていないものに分かれます。

この仕分けをしておくと、独立後に「なぜ前職ではできていたことができないのか」で止まりにくくなります。足りないのは能力ではなく、会社が持っていた看板や仕組みだった、と分かっていれば、次に作るものが具体的になります。受注後の流れをどう設計するかは営業から入金までのフロー設計で整理しています。

独立のタイミングは、会社員のうちにどう決めるのか?

人生の目標を先に定め、そこに独立が必要なら「いつまでに独立したいか」を決めて、そこから逆算して在職中にやることを考える順番です。代表・原本は、この決め方を言葉にしています。

「自分の人生の目標をちゃんと定めてそれに対して独立が必要ならいつまでに独立をしたいのかっていうことをちゃんと決めて、それまでに会社員として何をなすべきかっていうことを考えていく。」(ノルツ株式会社代表・原本)

時期が決まっていないと、準備は「いつかやること」のまま先送りになりがちです。逆に時期を置くと、残りの期間でできることが自動的に絞られます。

代表・原本が挙げている在職中の行動は、次のようなものです。

  1. 独立する分野を決め、その分野の準備を着実に進める
  2. 今働いている会社が、なぜうまくいっているのかを分析する
  3. 上司・人事・社長に、理念や成功要因を積極的に質問する
  4. いつまでに独立するか、タイミングを決める
  5. 独立に必要なスキル(たとえば営業)に、会社員のうちにチャレンジする

営業のように、独立後に必ず向き合うことになる領域は、給料をもらいながら経験できる在職中が試しやすいタイミングです。社内で手を挙げられる機会があれば、担当の枠を超えて関わってみる。それ自体が、独立後の自分の守備範囲を広げる準備になります。在職中のテスト販売については脱サラ準備は会社員のうちにも参考になります。

会社員・投資・独立を並行するという選択肢はどう考えるか?

独立は「会社員をやめる」こととセットである必要はありません。代表・原本は、会社員と投資家と独立を全部並行するのも方法の一つだと語っています。二択で考えないほうが、取れる手は増えます。

「場合によっては会社員と投資家とね、独立っていうのを全部並行するっていうのもね、いい方法だと思います。」(ノルツ株式会社代表・原本)

代表・原本は、「会社員と独立どっち」という見え方そのものについても、先入観を取り払ったほうがいいと語っています。

「会社員と独立どっちっていう、この2択のように見えているものを、先入観を取っ払ったほうがいいと正直思っています。」(ノルツ株式会社代表・原本)

今の会社を分析するという準備は、並行という選び方とも相性がいいものです。勤め先に在籍したまま、事業の仕組みを学び、必要なスキルに挑戦し、そのうえで独立の時期を決める。どの道を選んでも、分析して得たものは手元に残ります。

選択肢の広げ方そのものについては会社員か独立かの二択を手放すで詳しく整理しています。

独立の生存率の厳しさを踏まえて、どう判断すればいいのか?

代表・原本は、独立を無条件に勧めることはしないと語り、10年間生存できる確率について「一番低いもので見ると、確か6%」という数字に言及しています。厳しさを前提に置いたうえで、自分の目標に照らして判断する姿勢です。

「独立するのはオススメですよっていうことは私は基本的には言わないようにしていまして」(ノルツ株式会社代表・原本)

「独立して10年間生存できる確率って言うと、まあいろんなね、分析あるんですけれども一番低いもので見ると、確か6%ってなってたんですよね。」(ノルツ株式会社代表・原本)

この6%という数字は、代表・原本がインタビューで語った内容で、どの調査を指すかまでは本人も「いろんな分析がある」と前置きしています。企業の生存率は、調査主体や対象業種、集計方法によって結果が変わるため、判断材料にするときは中小企業庁などの公的統計の最新版を確認してください(執筆時点=2026年9月時点の注意書きです)。

代表・原本自身は、会社員でいることの将来性を考え「このままだと先がない」と判断して独立を決めています。勧められたから独立する、数字が低いからやめる、ではなく、自分の目標に独立が必要かどうかで決める。その判断材料を増やす作業が、今の会社の分析であり、上司や社長への質問であり、独立時期の設定です。

今日からできるのは、顧客・選ばれる理由・利益の出どころ・集客経路の4つを、自分の会社について書き出してみることです。書けないところが、そのまま在職中に聞いて埋める項目になります。

よくある質問

今の会社を分析するといっても、担当業務の情報しか見られません。何から始められますか。

自分の担当範囲で分かることから書き出して構いません。たとえば、誰が顧客か、どんなときに受注が決まっているか、どの作業に時間がかかっているか。そのうえで、分からない項目を質問リストにして、上司や社長に聞いていきます。ノルツ株式会社代表・原本は、上司・人事・社長に理念や成功要因を積極的に質問することを勧めています。

独立を考えていることを会社に伝えたほうがいいですか。

伝えるかどうかは状況によります。記事で扱っているのは、独立の意思を表明することではなく、会社の理念や成功要因を学ぶ姿勢で質問するという行動です。代表・原本は「独立するのもね、視野に入っているんだったらクビ切られてもいいじゃないですか」と語り、遠慮して質問しないことのほうを問題として捉えています。

独立の時期はどのくらい先に設定すればいいですか。

記事の一次情報では、具体的な月数には触れていません。代表・原本が語っているのは、人生の目標を定め、それに独立が必要なら「いつまでに独立したいか」を決め、それまでに会社員として何をなすべきかを考える、という順番です。期間の長さより、先に時期を置いて逆算する点に意味があります。

独立の生存率が低いと聞くと不安になります。

代表・原本は「独立して10年間生存できる確率…一番低いもので見ると、確か6%」と語りつつ、独立を無条件に勧めることはしないと述べています。数字は調査によって幅があるため、中小企業庁などの公的統計の最新版で確認するのが前提です。不安を減らす方法のひとつが、今の会社がなぜ成立しているかを在職中に分析し、自分に足りない要素を先に把握しておくことです。

参考・出典

関連記事

独立後に売上が立つまでの期間と、お金の減り方をどう見積もるか
将来不安で独立を決める前に、勢いを確かめる6つの問い
独立を家族に相談するときの伝え方|理解を得るために共有すること

LINEで無料相談する ご利用の流れを見る

← shiftへ戻る