営業から入金までを先に描く。起業前にやる受注後のフロー設計

契約・提供・請求・入金を一本の線にする準備

本記事は、ノルツ株式会社代表・原本昌悟の実体験(取材で語られた内容)に基づいています。個人事業として開業した当時の準備の順番と、そこから組み直した受注後のフロー設計の考え方をまとめます。

この記事の要点

受注後の流れは、営業→契約→サービス提供→請求→入金までを一本の線で書き出し、各段階で使う書類(説明資料・見積・契約書・請求書)とお金が動くタイミングを先に決めておくところまで準備できていれば十分です。細部は走りながら直せますが、契約書だけは話が出る前に雛形を用意しておくと、商談の途中で止まらずに進められます。

公開日 2026-10-25 執筆:原本 昌悟(ノルツ株式会社 代表取締役)

机の上で営業から入金までの流れを紙に書き出している日本人の手元

起業前に、受注が決まった後の流れはどこまで決めておけばいい?

営業から契約、サービス提供、請求、入金までを一本の線として書き出し、各段階で使う書類とお金が動くタイミングを決めておけば、創業初期はまず十分です。細かい運用は動かしながら直せますが、線そのものは受注前に引いておくと迷いが減ります。

ノルツ株式会社代表・原本は、個人事業としてスタートしたとき、開業届を出し、ホームページと名刺を作り、そのまま交流会などに出て営業を始めました。順番としては「開業届 → ホームページ・名刺 → 営業」です。

この順番で動いた結果、名刺交換がアポイントにつながらないという状況に直面し、キャンペーンを打つ、チラシを作る、営業の説明資料を作る、といった対応を後追いで重ねることになりました。

「ホームページと名刺作っていきなり交流会行っても、なんか売れるわけじゃないですよね。」(ノルツ株式会社代表・原本)

さらに、契約になりそうな段階になって、契約書が整っていないことに気づいた、という経験もありました。ここから原本が導き出したのが、「何を売るか」「理念」「事業をどうやるか」という計画部分に時間を取り、営業から契約・サービス提供・入金までの一連のフローをイメージして準備を整えておく、という進め方です。

受注前に決めておくと動きやすい4点

  • 何を、いくらで売るか(商品の単位と金額)
  • 申し込みから契約までに、どの書類をどの順で使うか
  • サービスを提供し終える条件(どこまでやったら完了か)
  • 請求を出す日と、入金される日

この4点が決まっていれば、商談が前に進んだときに「次に何を出せばいいか」で止まりません。逆に言えば、ここが決まらないまま営業だけ先に進めると、受注が近づくほど手が止まります。

営業から入金までのフローは、どの順番で書き出せばいい?

紙かテキストに、営業・申し込み・契約・提供・請求・入金の6段階を左から右に並べ、各段階に「渡すもの」「もらうもの」「日付」を書き足していく方法が手早いです。穴があるところが、準備が足りていない段階です。

書き出す手順

  1. 売る商品を1つ選ぶ(複数ある場合はまず主力の1つから)
  2. その商品を誰に、どの場で紹介するかを書く
  3. 興味を持ってもらった後に渡す説明資料・見積の形を書く
  4. 申し込みの意思表示をどう受けるかを書く(口頭か、書面か)
  5. 契約書を交わす段階を書く
  6. サービスの提供期間と、完了の条件を書く
  7. 請求書を出す日を書く
  8. 入金予定日と、入金を確認する方法を書く

段階ごとに用意するものの一覧

段階用意するもの先に決めておくこと
営業説明資料誰に、どの場で会うか
見積・提案見積の形式価格と、含まれる範囲
契約契約書の雛形期間・金額・支払期日
提供進め方の共有資料完了の条件
請求請求書の形式請求日
入金事業用の口座入金予定日と確認方法

原本の場合、ホームページと名刺という「入口」から用意し、説明資料は後追いになりました。この経験を踏まえると、入口だけでなく出口(契約から入金まで)も同時に線を引いておくと、後からの作り直しが減ります。まずは主力商品1つ分のフローを、30分で一枚にまとめてみるところからで構いません。

契約書はいつ用意しておくと間に合う?

契約の話が出てから作り始めると、商談の勢いに追いつかないことがあります。営業を始める前に、主力商品の分だけでも雛形を1つ用意しておくと、受注が近づいた段階で止まりません。

原本は、契約になりそうな段階になってから契約書が整っていないことに気づいた、という経験をしています。ホームページと名刺を先に作り、営業を始めた後で、キャンペーンやチラシ、説明資料を後追いで用意していった流れの延長線上の出来事でした。

「結構後手後手、泥縄的対応って言うんですかね、でやってしまったという苦い経験がございます。」(ノルツ株式会社代表・原本)

ここから得た対応はシンプルで、営業を始める前に雛形を1つ持っておく、というものです。雛形があれば、契約の話が出たときに中身の調整だけで済みます。

雛形で先に埋めておきたい項目

  • 何を提供するか(作業の範囲)
  • いつからいつまでか(期間)
  • いくらか(金額)
  • いつ支払われるか(支払期日)
  • 変更や追加が出たときの扱い

契約内容の法的な妥当性については、専門家(弁護士等)に確認するのが確実です。ここで挙げているのは、自分の商品を言葉にしておくための準備であり、法的な助言ではありません。自分の商品の範囲と金額を先に言語化しておくと、専門家に相談するときも話が早くなります。

ノートパソコンの画面を確認しながら書類を読む日本人のビジネスパーソン

AIで契約書や説明資料を作ってもいい?

下書きを作る用途では活用できます。ただし契約書については、出てきたものをそのまま使わず、必ず自分の目で最後まで読むことを原本はすすめています。

説明資料や契約書の叩き台をAIで作ること自体は可能で、原本も活用できるものとして捉えています。そのうえで、契約書に関しては明確に線を引いています。

「契約書に関しては、AIに作らせたからオッケーではなくて、絶対に自分の目でちゃんと読んだ方がいいです。」(ノルツ株式会社代表・原本)

「読むと結構怖いなっていうことが書かれてる契約書も中にはあったりしますので、契約は適当に結ぶじゃなくて、ちゃんと自分の目で読んでやることをおすすめいたします。」(ノルツ株式会社代表・原本)

叩き台を使うときの進め方

  1. AIで雛形の下書きを作る
  2. 自分の商品に合わせて、範囲・期間・金額・支払期日を書き換える
  3. 最初から最後まで自分で音読するつもりで読む
  4. 意味が取れない箇所に印をつける
  5. 印のついた箇所を専門家に確認する

読めない箇所を残したまま進めないこと、という一点を守るだけで、契約前の確認の質は変わります。相手から提示された契約書を受け取る場面でも、同じく自分で読む姿勢が効いてきます。

事業用の口座は分けた方がいい?

原本は分けることをすすめています。個人事業の場合は口座名義が自分の名前のままになることもありますが、それでも事業用として別に1つ持っておく形です。

「事業の口座はちゃんと分けた方がいいと思います。」(ノルツ株式会社代表・原本)

原本が教訓として整理した起業準備の順番は、屋号を決め、開業届を出し、事業用の口座を分ける、という流れです。そのうえで「何を売るか」「理念」「事業計画」に時間をかけ、契約から入金までのフローをイメージして準備を整える、という組み立てになっています。

口座を分けておくと楽になること

  • 入金があったかどうかを、通帳の動きだけで確認できる
  • 事業のお金の残りが、生活費と混ざらずに見える
  • 請求と入金の突き合わせが、月末に一度で済む

受注後のフローの最後は「入金の確認」です。その確認先が生活費と同じ口座だと、毎回探す手間が発生します。フロー設計の一部として、口座を分けるところまで含めて準備しておくと、運用が軽くなります。金融機関の選び方については起業時の口座はどこに作る?4分類で考える金融機関の選び方でも整理しています。

フローはどこまで作り込んでから動き出せばいい?

完璧に整うのを待つ必要はありません。原本は、起業準備はどこまでやってもキリがないという前提に立ち、施策の成否を数字で判定できる状態を作ってから動き出すことをすすめています。

「起業準備ってどこまでやってもキリが正直ないので、完璧に準備ができたら起業するではなくて、やりたいことがあるんだったら起業する、しちゃっていいと思います。」(ノルツ株式会社代表・原本)

原本は、起業後は想像通りには動かないという前提も語っています。だからこそ、二手三手先の別パターンを考え、PDCAを回しながら進めることが必要になります。

「1個目の施策で動いた時に、その施策が成功なのか失敗なのかっていうのを数字で判定できる状態を作っておく」(ノルツ株式会社代表・原本)

動き出す前に決めておく3つ

  1. 最初の施策で、何の数字を見るか(問い合わせ件数、商談数、受注数など)
  2. どこまでいったら続け、どこで切り替えるかの線
  3. 切り替えるときの次の手(二手目・三手目)

この3つが決まっていれば、フローの細部が未完成でも前に進めます。判定の基準を先に作っておくこと自体が、受注後のフローを実地で磨いていく土台になります。なお原本は、収入が一度ゼロになることへの計画は必要としたうえで、熱意を持って歩を進めることも大事だと語っています。

会社を辞める前にできる準備はどれ?

原本は、辞める前にできるだけ準備を進めておくことをすすめています。開業届を出すのは最後でもいいくらいで、副業が認められているなら、辞める前に開業届を出して収入を得る進め方もあると語っています。

「辞める前にできるだけ準備進めちゃった方がいいと思います。」「開業届を出すところだけ一番最後にやればいいのかなっていうぐらい」(ノルツ株式会社代表・原本)

在職中に進めておけること

  • 辞めた後のスケジュール
  • どういう場に出て、どういう人と会うか
  • 人脈の作り方
  • マーケティング施策の内容
  • 事業計画書の作成、起業系セミナーへの参加の検討

受注後のフロー設計も、この在職中にできる準備に入ります。説明資料・見積・契約書の雛形・請求書の形式は、時間のあるうちに一度作っておけば、独立後は中身を埋めるだけで動かせます。

開業届の提出先や記載内容など、手続きの一般的なルールは制度として変わりうるため、執筆時点(2026年9月時点)の情報として扱い、最新の公式情報(国税庁等)で確認してください。副業の可否は勤務先の就業規則によって異なるため、在職中に進める場合は自分の勤務先のルールを確認したうえで判断するのが確実です。在職中のテスト販売については脱サラ準備は会社員のうちに。独立前のテスト販売でやっておくことでも触れています。

よくある質問

受注後のフローは、商品ごとに作り直す必要がありますか?

主力商品1つ分で型を作れば、他の商品は金額・期間・提供の条件を差し替えるだけで流用できます。まずは一番売りたい商品について、営業・見積・契約・提供・請求・入金の6段階を書き出すところから始めるのが手早い進め方です。

契約書は自分で作ってもいいのでしょうか?

ノルツ株式会社代表・原本は、AIなどで叩き台を作ること自体は可能としたうえで、契約書は必ず自分の目で読むことをすすめています。内容の法的な妥当性については、専門家(弁護士等)に確認するのが確実です。

事業用の口座は屋号がないと作れませんか?

原本は、口座名義が自分名義になるとしても、事業用の口座はできるだけ分けた方がよいと語っています。入金の確認と資金の把握が、生活費の口座と混ざらずに済むためです。金融機関ごとの取り扱いは異なるため、開設条件は各金融機関の公式情報で確認してください。

準備が終わらないまま起業しても大丈夫ですか?

原本は、起業準備はどこまでやってもキリがないため、完璧な準備を待つのではなく、やりたいことがあるなら踏み出してよいという考えを語っています。ただし収入が一度ゼロになることへの計画と、施策の成否を数字で判定できる状態は先に用意しておくことをすすめています。

参考・出典

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