独立の資金はいくら必要?資金繰り表は経費から組み立てる

売上は仮説でいい。出費は半年先まで数字にできる

本記事は、ノルツ株式会社代表・原本(原本 昌悟)が取材で語った内容(実体験と、創業前の相談で伝えている考え方)に基づいてまとめています。

この記事の要点

独立前の資金は、売上ではなく経費から逆算して決められます。売上は始める前には正確に読めないので仮説で置き、半年後の家賃や1年後の電気代といった出費は比較的明確に見積もれます。手持ち資金・月々の経費・見込み収入を並べれば、いつまでにいくら稼ぐ必要があるか、半年ほど余力を持つにはいくら準備するかが数字になります。

公開日 2026-10-06 執筆:原本 昌悟(ノルツ株式会社 代表取締役)

ノートパソコンの表計算ソフトに月ごとの経費と残高を入力している日本人の手元

独立前に用意する資金はいくら必要か、どう決めればいい?

金額は「いくらあれば安心か」という感覚ではなく、月々の経費から逆算して決められます。ノルツ株式会社代表・原本は、売上は始める前には読めないので仮説でよく、出費はかなり明確に分かると語っています。手持ち資金・月々の経費・見込み収入の3つを並べるところから始めるのが出発点です。

独立の資金額は、先に売上を予想してから決めようとすると手が止まります。まだ一件も受注していない段階で「月いくら売れるか」を当てるのは難しいからです。一方で、毎月出ていくお金は、契約や生活の実態からかなりの精度で数字にできます。

代表・原本は、事業計画書に入れる収益モデルの要素として次の3つを挙げています。

  • 現在の手持ち資金
  • 月々の経費
  • 見込み収入

この3つを並べると、「手持ち資金がどのくらいの期間もつのか」が自動的に見えてきます。必要額は、そこから決まります。感覚で「300万円くらいあれば」と置くのではなく、自分の経費の数字から出すほうが、根拠を持って動けます。

独立は収入が一度ゼロになるところからのスタートになります。代表・原本は取材でこう語っています。

独立するということは、収入は一度ゼロになります。それで1円以上稼がないと、結局収入がゼロのままになってしまう

だからこそ、ゼロの状態が何か月続いても耐えられるのかを、最初に数字で押さえておく価値があります。

なぜ売上ではなく経費から計画を立てるのか?

売上は開始前には正確に読めず、経費は読めるからです。ノルツ株式会社代表・原本は、売上は仮説ベースでよい一方、出費はかなり明確に分かると語っています。読める数字を土台にしたほうが、計画が実際の判断に使えるものになります。

代表・原本の発言をそのまま引用します。

売上いくら上がりますかっていうのはスタートする前には正直分かりませんので、そこは仮説ベースでいいんですけれども、その出費の方がいくらかかるのかっていうのは、かなり明確に分かると思うんですね

この整理には、計画づくりを前に進める効果があります。売上の予測に悩んで何日も止まるより、確度の高い経費を先に固めて、売上はあとから更新できる仮説として置いておく。そうすれば、計画は「当てるためのもの」ではなく「いつ判断するかを決めるためのもの」になります。

売上と経費の、見積もりやすさの違い

項目開始前の読みやすさ計画での扱い方
売上(見込み収入)正確には読めない仮説として置き、実績が出たら更新する
経費(出費)かなり明確に分かる月ごとに具体的な数字で積み上げる
手持ち資金確定しているスタート地点の残高として置く

売上が読めないことは、計画が立てられない理由にはなりません。読めない部分を仮説と割り切れば、読める部分だけで必要な準備額は出せます。

資金繰り表はどう作る?手順を知りたい

手持ち資金をスタート地点に置き、月々の経費を並べ、見込み収入を仮説で入れて、月末の残高を計算していく流れで作れます。残高がどこで薄くなるかが見えれば、準備額と期限が同時に決まります。難しい様式より、自分の数字が毎月並んでいることのほうが大切です。

  1. 現在の手持ち資金を書く。事業に使えるお金と、生活に必要なお金を分けて把握します。
  2. 月々の経費を月ごとに並べる。毎月ほぼ一定の固定費と、売上に応じて動く変動費を分けて書き出します。
  3. 先の月まで伸ばす。半年後、1年後の列まで作り、その月に実際にかかる金額を入れます。
  4. 見込み収入を仮説として入れる。根拠が薄くてもかまわないので、数字を置きます。
  5. 月末残高を計算する。前月末残高+収入−経費で、各月の残高を出します。
  6. 残高が薄くなる月を確認する。その月が「いつまでに稼ぐ必要があるか」の期限になります。
  7. 余力を持ちたい期間から、準備額を逆算する。代表・原本は「半年ぐらい余力を持つため」という言い方で、準備額の考え方を語っています。

表計算ソフトで十分です。重要なのは様式の体裁ではなく、月ごとの数字が並んでいて、残高の推移が目で追えることです。実績が出たら仮説の売上を書き換え、同じ表を更新していきます。

紙のノートに手書きで月ごとの収支を書き出している日本人

経費の見積もりは、どこまで先を見て書き出せばいい?

半年後、1年後の月まで書き出すのが一つの目安です。ノルツ株式会社代表・原本は「半年後の家賃」「1年後の電気代」という言い方で、出費が先の月まで具体的に見積もれることを説明しています。遠い未来の予想ではなく、すでに決まっている支払いを並べる作業です。

家賃は契約があるので半年後の金額が分かります。電気代も、使い方が大きく変わらなければ1年後のおおよその水準は見当がつきます。この「すでに決まっていること」を並べるだけで、経費の大半は形になります。

書き出すときの整理のしかた

  • 固定費:毎月ほぼ同額で出ていくもの。金額と支払月をそのまま並べます。
  • 変動費:仕事量や売上に応じて動くもの。売上の仮説と連動させて置きます。
  • 生活費:事業の経費とは分けて把握します。収入が一度ゼロになる前提では、ここが資金の減り方を大きく左右します。
  • 不定期に出るお金:年単位・数か月単位で発生する支払いは、その月の列に入れておきます。

経費を書き出す作業は、気が重くなりがちな部分でもあります。ただ、ここは当てにいく作業ではなく、分かっていることを転記する作業です。読める数字から埋めていけば、思ったより早く表の形になります。

売上の仮説は、どう置けばいいのか?

開始前の売上は正確には読めないため、仮説として置いて先に進めて問題ありません。ノルツ株式会社代表・原本も、売上は仮説ベースでよいと語っています。大切なのは数字を当てることではなく、実績が出たときに更新できる形で置いておくことです。

事業計画書の収益モデルに入れる「見込み収入」は、開始前の時点では仮説です。仮説である以上、置き方そのものに正解はありません。ただ、あとから検証できる形になっていると、計画が使える道具になります。

  • 単価と件数に分けて置く(合計金額だけで置かない)
  • 入金の月を書く(売上が立つ月と入金の月はずれることがある)
  • 実績が出たら、同じ表の数字を書き換える

仮説の精度を上げたい場合は、机上で考え込むより、小さく試して反応を見るほうが早いこともあります。先に小さくテストする考え方は 新規事業は先に小さくテスト。お客様にお願いして見えたこと にまとめています。

売上の仮説が心もとなくても、経費側が固まっていれば「いつまでに」「いくら」という目標は立ちます。順番を逆にしないことが、計画を止めないコツです。

資金繰り表ができると、何が分かって、どう判断に使える?

「いつまでにいくら稼ぐ必要があるか」と「どれくらい余力を持つにはいくら準備するか」が分かります。ノルツ株式会社代表・原本は、この2つを資金繰り表で出すべき答えとして挙げています。独立のタイミングを決めるときの、具体的な判断材料になります。

代表・原本の発言を引用します。

いつまでにいくら稼がないといけないのか、あるいは半年ぐらい余力を持つためにはいくら準備をしないといけないのか

この2つが数字になると、独立前にやることがはっきりします。

  • 期限が分かる:残高が薄くなる月が、最初の売上を立てたい期限になります。
  • 準備額が分かる:余力を持ちたい期間(たとえば半年)に必要な金額が出ます。
  • 打ち手が選べる:準備額に届かないなら、独立の時期をずらす、経費を下げる、在職中に受注の目処を作る、といった選択肢を比べられます。

独立するかどうかを迷っている段階であれば、お金・スキル・やりたいこと・家族や周囲の理解という4つの観点で整理する考え方を 脱サラで独立を迷うときの4つの軸と、決断の前に考えること にまとめています。資金繰り表は、このうち「お金」をシビアに見るための道具です。

資金繰り表は事業計画書のどこに入る?テンプレートを使ってもいい?

資金繰り表は、事業計画書の収益モデルの部分に入ります。ノルツ株式会社代表・原本は、テンプレートをそのまま埋めるのではなく、営業資料や説明資料を作る感覚で思いを込めて作ることをすすめています。様式は出発点として使い、中身は自分の数字と言葉で埋めるのが進め方です。

事業計画書の収益モデルには、現在の手持ち資金・月々の経費・見込み収入が入り、そこから資金繰り表につながります。代表・原本は、計画書そのものの作り方についてこう語っています。

事業計画書って例えばネット上からテンプレートみたいなのをダウンロードして書いてしまった場合、何というかあんまりそこに熱が入らないと私自身は思っています。もう本当に営業資料、説明資料を作るような感覚でちゃんとそこに熱を入れる、思いを入れる

様式そのものを否定する話ではありません。枠を参考にしながら、数字と背景を自分の言葉で埋めていくと、読む人に伝わる資料になります。事業計画書に入れる要素の全体像は 事業計画書の書き方:テンプレートに中身を入れる8つの要素 に整理しています。

公的機関の様式について

創業時の計画書や資金繰りの様式は、日本政策金融公庫や中小企業庁などの公的機関が公開しています(2026年9月時点)。制度や様式、記載項目は変わることがあるため、提出先に出す書類を作る場合は、最新の公式情報や公募要領を確認し、必要に応じて専門家に相談してください。

この記事を読んだ次にやること

  1. 表計算ソフトを開き、半年後・1年後までの月の列を作る
  2. 家賃・電気代など、すでに金額が分かっている固定費を入れる
  3. 手持ち資金を先頭に置き、月末残高を計算する
  4. 残高が薄くなる月を確認し、「いつまでにいくら」を書き出す

よくある質問

独立前の資金は、いくら用意すれば十分と言えますか?

一律の正解額はありません。月々の経費と手持ち資金を並べ、どれくらいの期間余力を持ちたいかから逆算して決める方法があります。ノルツ株式会社代表・原本は「半年ぐらい余力を持つため」という言い方で、準備額を期間から逆算する考え方を語っています。自分の経費の数字から出すほうが、根拠を持って動けます。

売上の見込みが立てられなくても、資金繰り表は作れますか?

作れます。売上は開始前には正確に読めないため仮説として置き、家賃や電気代などの出費を月ごとに積み上げれば、残高の推移は計算できます。実績が出たら仮説の数字を書き換えて、同じ表を更新していく形で使えます。

経費はどのくらい先の月まで書き出せばいいですか?

半年後、1年後の月まで書き出すのが一つの目安です。家賃は契約があるため半年後の金額が分かり、電気代も使い方が大きく変わらなければ1年後のおおよその水準は見当がつきます。遠い未来を予想するのではなく、すでに決まっている支払いを並べる作業として進められます。

資金繰り表の様式は、どこかからダウンロードしてもいいですか?

様式を出発点に使って問題ありません。日本政策金融公庫や中小企業庁などの公的機関が創業時の計画書の様式を公開しています(2026年9月時点)。ただし、数字と背景は自分の言葉で埋めるほうが、読む人に伝わる資料になります。提出先がある場合は、最新の公式情報を確認してください。

参考・出典

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