起業の値段の決め方|生活費から逆算する「月50万・1件10万×10本」の計算

相場でも勘でもなく、生活費と人件費から自分の値段を決める

この記事は、ノルツ株式会社代表・原本が、創業時に自分の商品・サービスの値段をどう決めてきたかを実体験からまとめたものです。値段の付け方が分からず迷っている創業期の方へ、生活費からの逆算と人件費ベースという2つの具体的な決め方を、当時使っていた数字のまま解説します。

この記事の要点

起業時の値段の決め方は、大きく「コストから決める」「相場から決める」「提供価値から決める」の3つがあります。ただし一人起業で現実的なのは、まず生活費から必要売上を逆算し(例:月50万円が必要で1件10万円なら月10本)、その本数が取れるかで妥当性を確かめる方法です。無形サービスは人件費(時給5000円〜1万円、日給5万円など)を基準に決め、時給2000円のような安値で計算しないことが要点です。

独立して最初にぶつかる壁が、自分の商品やサービスにいくらの値段をつけるか、という問題です。私(原本)も創業時、この値決めにとても悩みました。この記事では、一般的な値段の決め方を整理したうえで、私が創業時に試した「生活費からの逆算」と、いま実際に使っている「人件費ベース」という2つの具体的な決め方を、当時の数字のまま解説します。数字を盛るつもりはありません。きれいな理論より、一人で食べていくために実際どう計算したかのほうが、これから値段を決める方の役に立つと思うからです。

作業台で工具を前に見積書を書き込む日本人の事業者

起業の値段はどうやって決めればいいのか?

値段の決め方は、一般的に3つに分けられます。「コスト(原価)から決める」「マーケット上の相場から決める」「(まったく新しいものの場合)提供価値から決める」の3つです。まずこの3つのどれで考えているかを自分で把握することが出発点になります。

私自身の言葉で言えば、「値段の決め方って一般的にはコストから決めるという方法と、あとはマーケット上の相場から決めるという方法。あとは全く新しいものの場合は提供価値から決める」という整理です。競合の多い分野では、みなが値段をギリギリまで下げて提供しているケースが多く、相場に合わせるだけでは消耗戦になりがちです。

ただ、一人起業の現場では、この3分類の前にもっと切実な問いがあります。それは「その値段で自分が生きていけるのか」です。だから私が現実的に勧めるのは、まず生活費から必要な売上を逆算し、次に人件費で1日・1件あたりの単価を決める、という順番です。以下で具体的に説明します。

生活費から逆算して値段を決めるとは、どういうことか?

生活費からの逆算とは、「暮らしていくために毎月いくら稼ぐ必要があるか」を先に決め、そこから1件あたりの値段と必要な受注本数を割り出す方法です。値段そのものから考えるのではなく、必要売上から逆算します。

私が実際に使っていた計算はシンプルです。まず、1人あたり月50万円あれば生きていけると置きます。ここに活動費や仕入れなどを足して、たとえばトータルで月100万円を稼ぐ必要がある、と決めます。起業直後の人数は「1人か2人」程度が前提です。次に、その月100万円を1件いくらの仕事で埋めるかを考えます。

生活費からの逆算の例(原本が試した計算)

1人あたりの生活費:月50万円
活動費・仕入れ等を加えた必要売上:月100万円
1件あたりの単価:10万円
必要な受注本数:100万円 ÷ 10万円 = 月10本

この計算のいいところは、値段の妥当性を「気分」ではなく「本数」で検証できる点です。ただ正直に言うと、私自身はこの逆算だけではうまく回せず、実際には後述の人件費ベースに寄せていきました。逆算は考え方の出発点として役立ちますが、それだけで値段が決まるわけではありません。次の見出しで、その本数が現実的かどうかの見極め方を説明します。

1件10万円で月10本は、現実的に取れるのか?

逆算で本数が出たら、次に「その本数を本当に取れるか」を確かめます。値段が妥当かどうかは、必要本数を自分の集客力で取り切れるかで決まるからです。取れそうにないなら単価を上げ、余裕で取れそうなら単価を下げる、という調整になります。

私の計算例で言えば、月100万円を1件10万円で埋めるには月10本が必要でした。ここで考えるのは「10本取れるのか?」という一点です。もし月に100本も取れる見込みがあるなら、1件をもっと値下げして数で稼ぐ選択肢も出てきます。逆に月10本すら厳しいなら、1件20万円・月5本というように単価を上げて本数を減らす方向を検討します。

ポイントは、値段を先に決めて後から「売れないなあ」と悩むのではなく、必要本数という現実的な物差しで先に検算しておくことです。この順番だと、安すぎる値付けで身を削り続ける失敗を避けやすくなります。

無形サービスの値段は「人件費(日給)」でどう決めるのか?

コンサルティングや制作、伴走支援のような無形サービスは、人件費(自分の日給・時給)を基準に値段を決めるのが現実的です。仕入れ原価がほとんどない代わりに、投じているのは自分の時間だからです。私自身も現在は、無形商材については人件費ベースで値段を決め、その場の相談で調整できるやり方を取っています。

具体的には、自分の日給をあらかじめ決めておきます。「1日動いたら10万円」「5万円でもいい」「私の日給は1日5万円です」というように、1日単位の単価を持っておく。そのうえで、ある案件に何日かかるかを見積もれば、おおよその金額が出ます。無形サービスは「サービス提供にかかる時間まで含めて逆算する」のが本来の筋です。

人件費ベースの単価の目安(原本の考え方)

時給の目安:最低でも5,000円〜1万円(2,000円で計算するのは危険)
日給の例:1日5万円〜10万円
案件金額:日給 × 想定作業日数 で概算する

窓辺で自分の価格設定を見つめ直す日本人の経営者

なぜ時給2000円で計算すると、事業は詰むのか?

一人起業で自分の時給を2,000円のような安値で計算すると、事業はすぐに立ち行かなくなります。売上のすべてが自分の労働時間に紐づくうえ、営業・経理・打ち合わせなど「請求できない時間」が大量に発生するからです。私の実感でも、「時給2000円ぐらいでとかやっちゃうと、すぐ事業って詰んでしまいますので、最低でも時給5000円から1万円ぐらい」で計算したほうがいい、というのが結論です。

理由はシンプルで、稼働時間のすべてが売上になるわけではないからです。実際の一日には、提案書づくり、見積もり、移動、事務作業といった直接お金にならない時間が含まれます。時給2,000円で見積もった仕事を1日やっても、そこから経費と請求できない時間を差し引けば、手元にはほとんど残りません。だから単価は「アルバイトの時給」ではなく「一人で事業を回すための時給」で設計する必要があります。最低ラインを時給5,000円〜1万円に置くのは、贅沢ではなく事業を続けるための最低条件だと考えたほうが現実的です。

安く受けていい仕事と、いけない仕事の違いは何か?

同じ低単価でも、「継続につながる仕事」は安く受けてよく、「単発で終わる仕事」は安く受けるべきではありません。単発の仕事を安値で受けると、時間だけが消えて次につながらないからです。判断の軸は「その仕事の先に、継続的な関係があるかどうか」です。

私の言葉で言えば、「単発で終わっちゃう仕事は受けるべきじゃないと思うんです。単発で終わるんだったら結構いい金額を取ったほうがいい」ということです。一度きりで関係が切れる仕事なら、そこでしっかり利益を確保しないと、かけた時間が回収できません。

逆に、毎月1回ずっと一緒に仕事をしていけるような相手であれば、多少安めに受けても、そこから別の仕事につながっていく可能性があります。つまり値段は「1件いくら」だけでなく、「その先にどれだけ関係が続くか」まで含めて判断する、ということです。

仕事のタイプ値段の付け方理由
単発で終わる仕事安くしない。しっかりした金額を取る次につながらないため、その場で回収する必要がある
継続につながる相手多少安めでも受けてよい関係が続き、別の仕事に発展する可能性がある

無形商材の定価は、高めに設定したほうがいいのか?

無形商材で人件費ベースにする場合は、定価を高めに設定しておき、状況に応じて値引きできる形にしておくのがおすすめです。定価が低すぎると、そこから下げる余地がなくなり、交渉の幅を自分でつぶしてしまうからです。

私の考えはこうです。「無形商材で自分の人件費ベースでやっていく場合だったら、定価を高くしておいて、値引きできるよというような形でもいい」。定価を高めに置いておけば、相手や案件の性質に応じて「今回はここまで下げます」と調整でき、こちらが主導権を持ったまま交渉できます。

あわせて意識したいのが、売り込み方です。「自分はこれを提供しています」と一方的に売り込むのではなく、まず相手の課題を聞き出すこと。私も「お客様がどんな課題を持っているのかをちゃんと聞き出していって」、自社商品で解決できない場合でも「私はこういう技術を持っているので、こんなこともできますよ」と提案して契約につなげてきました。値段は、相手の課題と結びついて初めて意味を持ちます。

製品販売と無形サービスで、値決めはどう変えるべきか?

製品を作って売るモデルと、無形サービスを提供するモデルでは、値決めの考え方を分ける必要があります。無形サービスは人件費ベースで柔軟に決められますが、製品販売は原価・在庫・流通が絡むため、きちんとした料金体系を先に作らないと利益が読めなくなるからです。

無形サービスは、日給や時給を基準にその場で調整できる余地があります。一方、製品を作って売る場合は、材料費・製造にかかる時間・在庫リスクなどを織り込んだ料金体系をあらかじめ設計しておかないと、売れば売るほど赤字という事態も起こり得ます。人件費ベースの発想をそのまま製品に当てはめないよう、モデルごとに値決めの土台を分けて考えることが大切です。

なお、値段を下げても売れないときは、価格ではなく「誰に売っているか」に原因があるケースもあります。この販路と価格の関係は起業直後の値決めで失敗した話|相場200万円を50万円に下げても売れなかったで実体験をもとに整理しています。

あなたの「1日の単価」を一緒に決めます

生活費からの逆算も人件費ベースの単価も、頭では分かっていても、いざ自分の値段となると決めきれないものです。ノルツの起業支援では、代表・原本自身の計算方法も共有しながら、あなたの生活費・必要売上・日給を一緒に整理し、無理なく続けられる値付けを設計します。まずは気軽にご相談ください。

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