事業計画書は難しく書かなくていい

専門用語で飾るより、自分の言葉で熱意を語れる計画書を

この記事は、ノルツ株式会社代表・原本が、起業時に「事業計画書 テンプレート」を検索してそのまま計画書を作った体験をもとに書いています。事業計画書を難しく書くべきか迷っている創業期の方へ、専門用語より大事なこと、収支計画を固定費から逆算する具体的な考え方をお伝えします。

この記事の要点

事業計画書は専門用語で難しく書く必要はありません。実際に読むのは金融機関の新任・若手の担当者であることが多く、飾った計画書は読み手にも自分の説明にも向かないからです。大事なのは「なぜ起業し、何を成し遂げたいのか」を自分の言葉でストーリーとして語れること。収支計画は当たらない売上予測から作るのではなく、答えの出せる固定費から逆算し、「いつ資金が尽きるか」を起点に契約・商談件数まで落とし込むのが実務的です。

起業すると、創業計画書・事業計画書・経営計画書などと呼ばれる書類を作ることになります。融資を受けるときや、家族を説得するとき、あるいは補助金の申請でも求められます。けれど、私自身の正直な感覚を言えば、起業した瞬間は「事業計画書とは何なのか」がまったくわかりませんでした。少なくとも私はわからなかった。それでも書かなければならず、当時は「事業計画書 テンプレート」と検索して、出てきた雛形に沿って埋めていったのを覚えています。この記事では、その体験を経てたどり着いた「難しく書かなくていい」という考え方と、収支計画を固定費から逆算する具体的な方法をお伝えします。

自宅の書斎で資料を広げ、自分の言葉で事業計画書を書き出す日本人起業家

事業計画書は誰が読むために書くのか?

事業計画書を書くとき、多くの人が「プロっぽく、難しそうに」書こうとします。しかし、その計画書を実際に読むのは誰か——ここを考えると、書き方は大きく変わります。融資の場面で言えば、読むのは金融機関の新任の担当者や若手の担当者であることが少なくありません。相手はその道何十年のベテラン投資家ではなく、あなたの事業を初めて知る一人の担当者です。

専門用語だらけの複雑な計画書は、その読み手にとって理解しづらいだけでなく、書いた自分自身が口頭で説明するときにも足かせになります。私が実感したのは、事業計画書は「誰が読むのか」を具体的に思い描いてから書くと、自然と平易で伝わる文章になるということです。飾るための書類ではなく、相手に理解してもらうための書類だと捉え直すことが出発点になります。

事業計画書は専門用語で難しく書くべきか?

結論から言えば、専門用語で難しく書く必要はありません。むしろ逆効果になることが多いというのが私の考えです。体裁のプロっぽさよりも、自分の言葉で書いて、自分でも説明できることのほうがはるかに大事だからです。

たとえば収支計画の項目に「地代家賃」という会計用語が並んでいたとします。その用語自体が重要かと言えば、私は全然重要ではないと思っています。「家賃」でいいじゃないか、というのが正直なところです。同じように「事務所費」も「家賃」、その他の経費も「交通費」「交流会参加費」「Google広告費」「インスタの広告費」といった、自分が日常で使っている言葉で書けば十分です。用語を正しく難しくすることに労力を割くより、中身を自分の頭で理解している状態のほうが、はるかに価値があります。

事業計画書には結局、何を書けばいいのか?

事業計画書は基本的に「自分の熱意を伝えるためのもの」だと私は捉えています。書くべき核心は、なぜ自分は起業したのか、なぜこの事業をやりたいのか、そしてその事業を通じてどんなことを成し遂げたいのか——この3つを、ストーリーとしてしっかり話せるように整理することです。

数字の体裁を整えることに時間をかけるより、この「動機と目的の物語」を自分の言葉で語れる状態にしておくほうが、融資の面談でも、家族への説明でも、そして自分自身の意思決定でも効いてきます。事業計画書を「審査を通すための書類」ではなく「自分の志を言語化する作業」と考えると、書くべき中身が見えてきます。起業の動機やミッションをどう言語化するかで迷う場合は、過去の経験を棚卸しする方法が助けになります。

事業計画書に書く3つの問い

難しい様式を埋める前に、次の3つに自分の言葉で答えられるかを確認してください。ひとつ、なぜ自分は起業したのか。ふたつ、なぜこの事業をやりたいのか。みっつ、この事業を通じて何を成し遂げたいのか。この3つをストーリーとして語れれば、事業計画書の骨格はできています。

収支計画は売上と固定費、どちらから作るべきか?

収支計画は、売上ではなく固定費・経費から作るのが実務的です。理由はシンプルで、起業する前の段階では、いつ売上が立つかなど正確にはわからないからです。「起業する前なのだから、収益計画を立てるといっても、いつ売上が立つかわかるわけがない」——これが正直なところだと思います。起業前に作り込んだ売上予測には、そもそも信憑性がありません。

一方で、固定費や経費は事前にある程度計算できます。わかりやすい対比があります。「1年後の家賃はいくらですか」と聞かれれば、だいたい答えられる。でも「起業前の段階で1年後の売上はいくらですか」と聞かれても、答えられない。だからこそ、答えの出せる固定費・経費を先に書いておき、そこを起点に計画を組み立てるほうが理にかなっています。「1本50万円の商品が1ヶ月目に1本、2ヶ月目に2本……」といった売上ベースの適当な積み上げは、当たらない前提の上に建てた計画になりがちです。

朝日の差すデスクで起業前の収支計画を立てる準備をするミニマルなワークスペース

固定費から逆算すると、行動計画はどう決まるのか?

固定費を起点にすると、「いつ資金が尽きるか」から逆算して、契約時期や商談件数といった具体的な行動計画まで導けます。仮の数字で例え話をしてみます(以下はすべて「〜だとしましょう」という仮定の試算で、盛った数字ではありません)。

資本金のスタート時が300万円だとします。そして、生活費・事務所家賃・光熱費など諸々で毎月50万円かかると仮定します。すると単純計算で、6ヶ月で資金が尽きて会社が倒産する、という計算になります。ここが計画の出発点です。倒産しない状態を作るには、6ヶ月後までに売上が入っている必要がある。逆算すると、次のような時系列が見えてきます。

時点逆算して必要なこと
スタート時資本金300万円/月の固定費50万円 → 6ヶ月で資金が尽きる
5ヶ月後まで倒産を避けるため、請求を出しておく必要がある
4ヶ月後ごろまで5ヶ月後に請求を出すには、契約を結んでおく必要がある(サービス提供期間による)
そこから逆算契約に必要な商談件数・会うべき人数(アポイント数)の概算が出る

お金が6ヶ月後に尽きるのなら、5ヶ月後までには請求を出さなければなりません。5ヶ月後に請求を出すためには、サービス提供にかかる時間にもよりますが、ほとんどの場合4ヶ月後ぐらいには契約を結んでいる必要があります。契約に至るには何件の商談が必要か、その商談を作るには何人と会えばいいか——支出を起点にすると、こうした行動計画(アポイント数の概算)まで一本の線でつながります。売上の希望的な積み上げではなく、「何ヶ月後までにいくら必要か」という支出の現実から売上目標と行動量を逆算する。これが、私の考える本来の収支計画です。

融資の細かい数字は、誰がいつ詰めればいいのか?

ここまで読んで「自分の言葉で書いていいなら、財務の精度はどうするのか」と不安になるかもしれません。私の考える順序はこうです。まず起業前の段階では、自分の熱意と、固定費から逆算した大枠の行動計画を、自分の言葉で作っておく。そのうえで、実際に融資を受ける話になった時点で、財務のプロに見てもらえばよい、という順番です。

最初から完璧な財務諸表を一人で作り込もうとすると、当たらない売上予測に時間を溶かし、肝心の「なぜやるのか」が抜けた計画書になりがちです。細かい財務は専門家の力を借りられる領域なので、起業前の自分が抱え込む必要はありません。自分にしか書けない「動機と目的」に力を注ぎ、精緻な数字は必要になったタイミングでプロと詰める。この分業を意識するだけで、事業計画書づくりの負担はぐっと軽くなります。

事業計画と収支計画、一緒に組み立てます

ノルツの起業支援では、「事業計画書に何を書けばいいかわからない」という段階から、あなたの起業動機の言語化と、固定費から逆算する収支・行動計画づくりを一緒に進めます。テンプレートを前に手が止まっている方は、お気軽にご相談ください。

事業計画書は起業前に本当に作るべきか?

結論として、事業計画は起業する前に一度、想像でもいいので立ててみるべきです。事業計画は融資や家族への説得のためだけのものではなく、自分自身のためにこそ必要なものだからです。

固定費から逆算して「いつ資金が尽きるか」を一度でも自分の手で計算しておくと、起業後に見える景色が変わります。あと何ヶ月で何をしなければならないのか、そのために今週誰に会うべきなのか——漠然とした不安が、具体的な行動リストに変わるのです。想像上の数字でかまいません。起業前に一度立ててみることそのものに、意味があります。

まとめ:飾らず、自分の言葉で、固定費から逆算する

事業計画書は、専門用語で難しく飾る書類ではありません。読むのは若手の担当者であり、そして誰より自分自身です。大事なのは、なぜ起業し何を成し遂げたいのかを自分の言葉でストーリーとして語れること。収支計画は、当たらない売上予測からではなく、答えの出せる固定費から逆算し、「いつ資金が尽きるか」を起点に契約・商談件数まで落とし込むこと。融資の細かい数字は、必要になった時点でプロに見てもらえば十分です。私自身、起業した瞬間は事業計画書が何だかわからなかった一人です。だからこそ、想像でもいいので起業前に一度立ててみることを、強くおすすめします。

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