起業直後の値決めで失敗した話|相場200万円を50万円に下げても売れなかった

安くしても売れない。値決めは「誰に売るか」で決まっていた

この記事は、ノルツ株式会社代表・原本が、ウェブ制作で独立した直後に自分の値段を決められず迷走した実体験をもとに書いています。価格設定に悩む創業期の方へ、実際に試した3つの料金体系と、そこから得た結論をお伝えします。

この記事の要点

独立直後の値決めは「品質と原価から積み上げた正しい値段」でも売れません。私(原本)は前職の受注単価200万円前後に対し、一人で作る質の低下を織り込んで50万〜100万円に設定し、次に基本料金20万円+1ページ2万円の単価制へ変えましたが、どちらも売れませんでした。原因は価格ではなく、目の前の相手に強いニーズと予算がなかったこと。値決めは「いくらが妥当か」ではなく「誰に売るか」で決まります。

独立して最初にぶつかる壁のひとつが、自分の仕事にいくらの値段をつけるか、という問題です。私はウェブ制作で起業しましたが、この値決めで盛大に迷走しました。相場より安くしても売れず、料金体系を作り直しても売れず、最終的に価格の考え方そのものを組み替えることになりました。この記事では、実際に試した3つの価格設定と、それぞれがどうなったのか、そして何が間違っていたのかを、当時の数字のまま書いています。数字を盛るつもりはありません。うまくいかなかった過程こそが、これから値段を決める方にとって役に立つと思うからです。

電卓と見積書を前に価格設定を考える日本人の手元

独立したら、いくらで受注すればいいのか?

結論から言うと、独立直後の値段は「前職の相場」からは決められません。私が会社員時代に勤めていた制作会社では、ホームページ1本およそ200万円前後で受注していました。ただしこれは、デザイナーとコーダーが分業する体制があって成立していた価格です。

独立すると、その前提が丸ごと消えます。私にはデザインの振り先がなく、ヒアリングからデザイン、実装まで全部を一人で対応することになりました。正直に言えば、デザインの質は1ランク落ちる。それは自分でも分かっていました。だから「質が落ちる分は安くしよう」と考えたのです。この発想自体は誠実に見えますが、後で振り返ると、ここが最初のつまずきの入口でした。

もうひとつ厄介だったのが、案件の規模がバラバラだったことです。1ページだけのサイトから100ページ規模のサイトまで、同じ看板で受ける以上、矛盾なく説明できる料金体系が必要でした。「規模が違うのに、なぜ同じ値段なのか」と聞かれて答えられない料金表は、それ自体が信用を削ります。

相場200万円を50万円に下げたら売れたのか?

売れませんでした。私が最初に設定したのは50万〜100万円です。前職の相場のおよそ4分の1から2分の1にあたる水準で、「質が1ランク落ちる分を割り引いた」つもりの価格でした。

この価格には、自分なりの理屈がありました。品質が下がるなら値段も下げるのが筋だ、という原価と品質からの積み上げです。実際、200万円と比べれば圧倒的に安い。相手にとってお得な提案のはずでした。それでも決まらない。当時の私は「まだ高いのだろうか」「説明が足りないのだろうか」と、価格と伝え方の側ばかりを疑っていました。

今なら分かりますが、疑うべきはそこではありませんでした。50万円が高いか安いかを判断できるのは、そもそもホームページに50万円を出す予算と必要性がある相手だけです。その相手の前に立てていなければ、価格をいくら調整しても答えは変わりません。

ページ単価制にすれば料金体系の矛盾は解けるのか?

料金体系の矛盾は解けましたが、売れるようにはなりませんでした。50万〜100万円という幅のある価格に説明力がないと感じた私は、次に単価制へ切り替えました。内訳は明快です。

当時の単価制の中身(独立直後・原本の実例)

基本料金:20万円
ページ単価:1ページあたり2万円
計算例:10ページのサイト → 20万円+(2万円×10ページ)=40万円

この体系は、1ページの案件も100ページの案件も同じ式で説明できます。規模が違う案件を矛盾なく受けられるという、当初の課題はきれいに解決しました。金額としても、10ページで40万円ですから、前職の200万円前後と比べれば十分に安い水準です。

ところが、実際に売り出してみたところ、売れませんでした。当時の私の言葉をそのまま書けば、「それで実際に売り出してみようとしたところ、売れませんでした」。これが2回目の失敗です。価格の説明可能性を上げても、需要が生まれるわけではなかった、ということです。

安くしても売れないのは、なぜなのか?

私の場合、答えは「売る相手を間違えていたから」でした。当時の私が値段を提示していたのは、交流会で知り合った目の前の人たちです。

この事実に気づいたとき、値決めの前提が崩れました。「交流会で知り合った目の前の人がそれを買ってくれるかといったら、そんなお金普通ないんですよね」——これが当時の実感です。40万円のホームページが高いか安いかという議論以前に、その場にいる人には40万円を出す予算も、出すだけの切迫したニーズもなかった。だから、いくらに下げても売れないのは当たり前でした。

ここで、価格が販路によってどれだけ変わるかを示す事実があります。私が見てきた範囲では、広告代理店経由で発注されるホームページ制作の案件には、代理店側が400万〜500万円を取っているものもありました。その構造なら、制作側がその半分程度を受け取っても成立します。同じ制作物、同じ私の腕でも、代理店の先にいる企業に届けば数百万円、交流会の目の前の人に出せば数十万円でも売れない。値段を決めているのは、品質でも原価でもなく、届いた先の相手だったのです。

資金繰りの資料を前に考え込む日本人の経営者

同じサービスでも、売れる値段は販路でどれだけ変わるのか?

私の実体験の範囲では、同じホームページ制作でも、届ける先によって提示される金額はまるで違いました。以下は、私が実際に経験・見聞きした範囲の数字です。あくまで独立直後・ウェブ制作という一つの業界での一例であり、すべての業種に当てはまる相場ではありません。

届ける先(販路)当時の金額結果
制作会社(会社員時代の勤務先)1本およそ200万円前後分業体制込みで成立
広告代理店経由の企業案件代理店側で400万〜500万円取る案件もあり制作側が半分程度取っても問題ない構造だと私は見ていた(実績ではなく見立て)
交流会で知り合った個人・小規模事業者50万〜100万円/単価制40万円前後売れなかった

この表が示しているのは、価格が「自分の実力を正しく数値化したもの」ではない、ということです。価格は、相手の予算とニーズの中でしか成立しません。だから値決めで最初に考えるべきは「私の仕事はいくらの価値があるか」ではなく、「その金額を出せる相手は誰で、その人にどうやって会うか」です。順番が逆だと、私のように何度も料金表を作り直すことになります。

支払いのハードルを下げると、話は前に進むのか?

私の場合は前に進みました。単価制で売れなかった後、私は発想を切り替えて「初期費用0円」モデルを作りました。仕組みはシンプルです。

  1. 通常どおり、制作内容から見積もり金額を算出する
  2. その見積額を20で割った金額を、月額費用として設定する
  3. 初期費用は0円とし、最低2年間の契約とする

当時の私の説明はこうです。「初期費用をゼロ円にする代わりに、本来の見積もりの製作金額を、20で割った金額を月額費用としていただく」。相手からすると、まとまった資金を用意しなくてもホームページを持てる形になります。

当時はホームページ制作の初期費用0円がまだ珍しく、「0円なの?」と食いついてくれる方が結構いらっしゃいました。「それだと何件か売れた」というのが実際のところです。効果は、契約数より先に「話を聞いてもらえるかどうか」に出ました。その一言で商談の土台に乗れるようになったのです。そして興味深いことに、説明を聞いたうえで「じゃあ一括で払うよと言って払ってくれる方も、中にはいらっしゃいました」。つまり、月額化そのものが目的ではなく、支払いのハードルを一度崩すことで、相手が本気で検討してくれる状態を作れたということです。

なお、運用は正直まちまちでした。相手によっては同額の分割払いにしたケースもあります。きれいに設計しきったモデルというより、目の前の相手に合わせて形を変えていた、というのが実態です。

初期費用0円モデルは今でも通用するのか?

私の見立てでは、ウェブ制作の領域では今は通用しにくくなっています。理由は競合環境の変化です。コロナ禍のあと、「実績を作りたいので無料でもいいから作らせてほしい」という同業者が大量に現れました。「実績作りたいんで、無料でもいいんで作らせてくれみたいな、すごい溢れちゃっていたので、そのモデルは今では通用しないんじゃないかな」——これが2026年7月時点での私の判断です。

初期費用0円の強みは「支払いのハードルを競合より低くできること」でした。ところが競合の下限が0円まで落ちれば、そのハードルの差は消えます。つまりこのモデルは、価格の常識が固まっている市場でこそ効く手段だったわけです。業界を変えれば、同じ発想がまだ有効な可能性は十分にあると考えています。

ここから引き出せる教訓はひとつです。価格モデルには賞味期限がある。うまくいった料金体系も、市場環境が変われば効かなくなります。だから料金表は一度作って終わりではなく、市場を見ながら組み替え続けるものだと考えたほうが現実的です。

値決めで失敗しないために、何から考えればいいのか?

私の失敗を踏まえると、考える順番は次のようになります。価格から考えないことが要点です。

  1. その金額を出せる相手を先に決める:予算があり、その課題に切迫感がある相手は誰かを具体的に書き出す。ここが空欄のまま料金表を作っても、私のように売れません。
  2. その相手にどう届くかを設計する:紹介か、代理店経由か、直接か。私の場合、届く先が交流会だけだった時期は、何をいくらにしても届きませんでした。
  3. その販路で成立する価格帯を調べる:同じ制作物でも、代理店経由なら数百万円、直販なら数十万円と、成立する水準は販路ごとに違います。
  4. 説明できる料金体系に落とす:規模の違う案件を矛盾なく受けられる式にする(私の場合は基本料金+ページ単価)。ここは価格の妥当性ではなく、説明の一貫性の問題です。
  5. 支払いのハードルを崩す選択肢を用意する:初期費用0円や分割など、検討の土台に乗るための入り口を持っておく。ただし賞味期限があることは織り込む。

順番を守れば必ず売れる、とまでは言えません。ただ、少なくとも「安くしたのに売れない」と価格だけを何度も削る消耗は避けられます。私が2回の作り直しを経てようやく気づいたのが、この順番でした。

安さは、独立直後の武器になるのか?

なりません。少なくとも私の場合はそうでした。「質が1ランク落ちるから安くする」という値決めは、誠実なつもりで、実は自分の首を絞めます。安くしても、予算のない相手には届かない。そして安い値段で受け続ければ、一人の身では時間だけが減っていきます。

安くする前に確かめるべきは、たった一つ。その金額を出せる相手の前に、自分は立てているか。立てていないなら、値下げは何も解決しません。私が50万円でも40万円でも売れなかったのは、まさにここが空白だったからです。売れない原因が価格ではなく信頼にある場合もあります。この見極めについては「いい商品なのに売れない」の正体は信頼不足で整理しています。

値決めの前に「誰に売るか」を一緒に整理します

価格を下げても売れないとき、原因が販路なのか、相手なのか、信頼なのかを一人で切り分けるのは難しいものです。ノルツの起業支援では、代表・原本自身の失敗も含めた実体験をもとに、誰に・どう届けて・いくらで成立させるかを一緒に設計します。まずは気軽にご相談ください。

関連記事

「いい商品なのに売れない」の正体は信頼不足|実績・人間関係・看板で信頼を作る
実績ゼロから信頼を作る方法|数字と事例で「選ばれる理由」を用意する
看板を失って気づく、組織で得ていた本当の力
お金を持つ企業の経営者にアプローチする方法|紹介を軸に考える
交流会が「意味ない」と感じる本当の原因|無差別な売り込みをやめる

LINEで無料相談する ご利用の流れを見る

← コラム一覧へ戻る