事業計画書の本質は「熱意を伝える」ストーリー

なぜ起業し、何を成し遂げたいかを語れるように作る

この記事は、ノルツ株式会社代表・原本が、起業した瞬間に「事業計画書とは何なのか」がわからず、検索したテンプレートをそのまま埋めた体験をもとに書いています。事業計画書を何のために、何を軸に書けばいいのか迷っている創業期の方へ、数字の精緻さより先に押さえるべき「本質」をお伝えします。

この記事の要点

事業計画書の本質は、収益計画の精度や体裁の整った数字ではありません。「なぜ自分が起業し、この事業を通じて何を成し遂げたいのか」を、自分の言葉でストーリーとして語れる状態にすることです。起業前の数字はそもそも当たらないことが前提であり、読み手(融資担当者や自分自身)が本当に見ているのは、動機と目的に一貫性があるかどうかです。

起業した瞬間、私(ノルツ株式会社代表・原本)は正直、事業計画書が何なのかまったくわかりませんでした。少なくとも私はそうでした。それでも書類として提出しなければならず、「事業計画書 テンプレート」と検索し、出てきた雛形の空欄を一つずつ埋めていった記憶があります。当時の私は、その作業を「体裁を整える事務作業」だと思っていました。しかし今振り返ると、事業計画書という書類そのものの目的を取り違えていたのだと思います。

事業計画のストーリーについてホワイトボードを囲んで話し合う日本人の起業家チーム

事業計画書は結局、何のために書くのか?

事業計画書は、基本的に「自分の熱意を伝えるためのもの」だというのが私の結論です。なぜ自分は起業したのか、なぜこの事業をやりたいのか、そしてその事業を通じて何を成し遂げたいのか——この3つを、ストーリーとしてしっかり話せるように整理すること。それが事業計画書という書類の本質だと考えています。

融資審査の書類だから、補助金の申請書だから、というフォーマット上の要請にとらわれると、つい体裁や数字の精緻さに意識が向きます。しかし、フォーマットが何であれ、その中身の核にあるべきものは変わりません。動機と目的のストーリーです。書式が求める項目をすべて埋め終えていても、この核が抜けていれば、事業計画書としては骨組みしかない状態だと私は考えています。

テンプレートをそのまま埋めるだけでは、なぜ不十分なのか?

テンプレートの空欄を埋めること自体は悪いことではありません。私自身、最初はそうやって始めました。ただし、空欄を埋めた「その先」に進まないと、事業計画書は自分にとっても他人にとっても意味を持たない書類になります。テンプレートは骨格を教えてくれますが、その骨格に自分の動機というストーリーを通す作業までは代わりにやってくれないからです。

特に見落とされがちなのが「誰がこの書類を読むのか」という視点です。融資の場面で実際に読むのは、その道何十年のベテラン投資家ではなく、金融機関の新任・若手の担当者であることが少なくありません。相手が初めてあなたの事業を知る一人の担当者だと考えれば、専門用語で固めた無機質な計画書より、なぜこの事業をやりたいのかが伝わるストーリーの方が、はるかに強く印象に残ります。

事業計画書を「ストーリー」として書くとは、具体的に何をすることか?

ストーリーとして書くというのは、単に感情的な文章を書くという意味ではありません。次の4つの要素を、自分の言葉で一本の線につなげることです。

事業計画のストーリーをつなぐ4つの要素

1. きっかけ:何に課題や違和感を感じて起業を考えたか。2. 動機:数ある選択肢の中で、なぜこの事業を選んだか。3. 行動:起業に向けて実際に何を調べ、何をしてきたか。4. ゴール:この事業を通じて最終的に何を成し遂げたいか。この4つが一本の線でつながっていれば、数字を厚く盛らなくても、読み手に「この人は本気だ」と伝わります。

たとえば「大企業の非効率さに疑問を感じたことがきっかけで、家賃や交通費という身近な言葉で経費を考えながら、5年後にはこの業界の当たり前を変えたいと思っている」——これだけでも、きっかけ・動機・ゴールが一本につながった一つのストーリーです。専門用語や体裁を整える前に、まずこの4つを自分の言葉で書き出してみることをお勧めします。

オフィスのボードの前で事業の構想を考え込む日本人男性の起業家

数字の精度より先に固めるべきことは何か?

起業前の段階で、正確な売上予測を作り込む必要はありません。「起業する前なんですから、収益計画を立てるといっても、いつ売上が立つかわかるわけがない」というのが実感です。当たらない前提の数字を精緻に積み上げるより、先に固めるべきなのは動機のストーリーであり、その次にようやく固定費・経費という「答えの出せる部分」です。固定費から資金がいつ尽きるかを逆算し、行動計画まで落とし込む具体的な手順(資本金・月々の固定費・請求時期の例)は、別記事「事業計画書は難しく書かなくていい」「起業の値段の決め方」で数字の例とあわせて解説しています。ここで押さえておきたいのは、数字の精度を上げる作業は、ストーリーが固まった後で構わないという順序です。

事業計画書は誰のために書けばいいのか?

事業計画書は、融資担当者や家族を説得するためだけの書類ではありません。私が実感したのは、事業計画書は最終的に「自分自身のため」に必要なものだということです。「自分自身のためにも、事業計画って絶対必要なものだと思いますので、ぜひ一回起業する前の段階で、想像でもいいので、一回立ってみるのがいい」——これは、他人に見せる前提の書類を作る過程で、自分の頭の中にあった動機を初めて言語化できた、という経験から出てきた言葉です。

事業計画書を書く過程そのものが、「なぜ自分はこれをやりたいのか」を自分自身に問い直す機会になります。読み手を意識して言葉を選ぶからこそ、あいまいだった動機が輪郭を持つのです。頭の中だけで考えているうちは何となく分かった気になっていても、いざ他人に読ませる文章として書き出してみると、言葉に詰まる箇所が出てきます。その詰まった箇所こそ、まだ自分の中で言語化しきれていない部分であり、事業計画書づくりを通じて向き合う価値のあるポイントです。起業の動機やミッションをどう言語化するかで迷う場合は、過去の経験を棚卸しする方法も助けになります。

動機の言語化は、一人で抱え込まなくていい

ノルツの起業支援では、「事業計画書に何を書けばいいかわからない」という段階から、あなたの起業動機をストーリーとして言語化する作業を一緒に進めます。テンプレートを前に手が止まっている方は、お気軽にご相談ください。

まとめ:数字より先に、なぜやりたいかを語れる状態にする

事業計画書の本質は、体裁の整った数字や専門用語ではなく、「なぜ自分が起業し、この事業を通じて何を成し遂げたいのか」を自分の言葉でストーリーとして語れることです。起業前の売上予測はそもそも当たらない前提のものであり、無理に精緻化する必要はありません。先に固めるべきは動機のストーリーであり、数字はその後、固定費から逆算する形で組み立てれば十分です。そして何より、この書類は他人のためだけでなく、自分自身のために書く価値があります。想像でもいいので、起業前に一度、自分の言葉で書き出してみてください。

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