この記事の要点
一人社長は、サービス提供・営業・経理財務処理まで業務が自分に集中します。だから事業を設計する段階で「自分の稼働をあまり使わずに提供できる形か」を先に問うと動きやすくなります。つなぐだけで成立する営業代行、紹介するだけで成立する採用代行、AIによる業務効率化・自動化などが選択肢です。そして小さくテストし、顧客が増えても回るかを実行前に問い直すのが要点です。
公開日 2026-09-29 執筆:原本 昌悟(ノルツ株式会社 代表取締役)
一人社長が「自分の時間を使わない事業」から考えるのはなぜ?
一人で独立すると、サービス提供だけでなく営業や経理財務処理まで、すべての業務に自分のリソースが割かれます。だからノルツ株式会社代表・原本は、自分のリソースをあまり割かなくても提供できるビジネスモデルが望ましいと考えています。事業を始めてから人手を増やすのではなく、設計の段階で稼働の置き場所を決めるという考え方です。
一人社長の稼働は、次のような業務に分散します。どれも売上に直結する順番が違うのに、担当者は一人しかいません。
- サービス提供(納品そのもの)
- 営業(見込み客と会う、提案する)
- 経理・財務処理
ここで「自分が動いた分だけ売上になる形」だけを持っていると、稼働が埋まった時点で事業の上限が決まります。だから原本は、事業の中身を考える段階で自分のリソースの使い方から逆算する立場を取っています。
「結局事業を一人社長で事業をやるとき、リソースとの戦いになります。なので、この事業がスケールした場合にちゃんと回るのか、っていうところをね、あの問いを毎回立てるようにするといいんじゃないかなというふうに思っております。」(ノルツ株式会社代表・原本)
この問いは、事業を絞るためのものではありません。「今の自分一人でも受けられる形はどれか」を見つけるための問いです。答えが出れば、やる順番がそのまま決まります。
自分の稼働に依存しない事業には、どんな型がありますか?
原本が挙げるのは、つなぐだけで成立する営業代行、紹介するだけで成立する採用代行、そしてAIによる業務効率化・自動化です。最近はAI活用が選択肢として増えてきた、という見方をしています。いずれも「自分が手を動かし続ける時間」が売上と直結しにくい構造になっている点が共通します。
| 型 | 自分の稼働の中心 | 数を増やすときに先に見る点(一般的な考え方) |
|---|---|---|
| 営業代行 | つなぐこと(相手と相手を接続する) | 接点を持てる相手の数 |
| 採用代行 | 紹介すること(人と会社を結ぶ) | 紹介できる母集団の広さ |
| AIによる業務効率化・自動化 | 仕組みを設計し、動く状態にしておくこと | ツール側の利用量の制限や消費量 |
原本が新規事業として1つ着手したのは、3つ目のAI活用の型です。自分の業務をAIで自動化し、その自動化した業務自体をサービスとして販売する、という発想でした。
選ぶときの見方
どの型が優れているかではなく、「自分の手元にある材料でどれが組めるか」で決めると具体的になります。人のつながりが資産なら営業代行や採用代行の型、自分の業務手順が整理できているならAI自動化の型が組みやすい、という見方ができます。
AIで自動化した業務をそのまま売るとは、どういう進め方ですか?
原本は、Claude(クロード)のスケジュール機能を使って業務が回るように設定し、それをサービスとして提供しようとしました。自分が毎回作業するのではなく、動いている仕組みをそのまま顧客に提供する形です。新規事業として1個、この発想で事業をスタートさせています。
進め方を整理すると、次の順番になります。
- 自分の中で繰り返し発生している業務を洗い出す
- その業務をAIで自動化し、放っておいても回る状態にする
- 自動化した業務そのものをサービスとして提供する
- お客様にテストをお願いし、実際の反応と負荷を見る
「こういう方法でやればいいんじゃないかという発想をするのがすごい大事です。それで実際にテストをしてみて、お客様の反応というんですかね、どういうような反応をされるのかとか、すごい大事だなというふうに思っています。」(ノルツ株式会社代表・原本)
この型の良さは、納品のたびに自分の時間を差し出す必要が薄いことです。一方で、自分の時間の代わりにツール側の利用量という別の資源を使うことになります。ここを先に測っておくのが、この型を選ぶときの実務です。
なお、AIツールの利用量の考え方や上限は提供元の仕様によって変わります。Claudeの利用量の制限については提供元の公式情報で案内されているため、導入前に最新の公式情報で確認してください(執筆時点=2026年9月時点)。
テストをすると、何が分かるのですか?
原本は「テストをさせてください」とお客様にお願いし、何件かテストを実施しました。その結果、トークンの消費量と、同時に対応できるお客様の数の上限が具体的に見えてきました。頭の中の試算ではなく、実際に動かした数字として把握できたのが収穫です。
テストで見えたのは、次の2つでした。
- 1件の業務を回すときのトークンの消費量
- 同時に対応できるお客様の数の上限
「テストをさせてくださいとお願いをして、何件かテストをしたからこそ、このトークンの消費量とかね、上限の同時に対応できるお客様の数とかそういうのが見えてきたという問題がありますので、テストすることは本当に大事だなというふうに思っております。」(ノルツ株式会社代表・原本)
テストで確かめた技術的な条件
実際に動かしてみると、トークンの消費が意外と大きいことが分かりました。Claudeには5時間ごとに利用量の制限があり、企業数を増やすとこの5時間の制限にかかってしまう、という点に原本は気づいています。
「意外とですね、トークンの消費が大きくて、クロードって5時間ごとに利用量の制限があるんですけれども、これ企業数を増やしてしまうと、この5時間の制限にどうしてもかかってしまうなということに気がつきました。」(ノルツ株式会社代表・原本)
現在は、5時間ごとの利用制限にかからないやり方に改善を進めているところです。早い段階でテストしたからこそ、提供できる件数の条件が数字で見え、改善する対象がはっきりしました。
「お客様が増えても回るか」を実行前に確かめる手順は?
理想は、テストと同時に、実行する前の状態で「お客様が増えてもこの事業は成り立つのか」を考えることです。原本はこの問いを毎回立てるようにするといいと語っています。1件あたりの負荷と上限を数字にして、想定顧客数で掛け算するだけでも判断材料になります。
創業期の一人社長が使えるチェックの順番です。
- 1件あたりの負荷を測る:1件の提供に必要な自分の稼働時間、またはツールの消費量を出す
- 上限を確認する:自分が動ける時間、または使っているツール側の利用量の制限を確認する
- 想定件数で掛け算する:10件、30件と増やしたときに上限を越えないかを試算する
- 越える場合は設計を変える:処理の頻度、提供の単位、使う仕組みを組み替える
- 小さくテストして数字を上書きする:実際にお客様にテストをお願いし、試算と実測の差を埋める
このチェックが効く理由
自分の稼働を使わない型を選んでも、上限そのものが消えるわけではありません。上限の置き場所が、自分の時間から別の資源に移るだけです。だからこそ、その置き場所がどこで、どこで頭を打つのかを先に知っておけば、受注してから慌てずに済みます。原本の新規事業でも、テストによってこの上限が先に見えたことが改善の出発点になりました。
この発想を自分の事業に当てはめるには、次に何をすればいい?
まずは自分の業務を「自分が動かないと進まないもの」と「仕組みで進むもの」に分けることから始められます。次に、仕組みで進む側をサービスとして出せる形に組み替え、小さくテストして上限を数字にします。発想を出すこと、テストすること、増えても回るかを問うこと、この3つが揃えば前に進みます。
今日から取りかかれる順番です。
- 1週間の自分の業務を書き出し、サービス提供・営業・経理財務処理に分ける
- その中から、繰り返し発生していて手順が決まっている業務を1つ選ぶ
- その業務をAIや仕組みで回せる形にして、提供できる単位に整える
- お客様に「テストをさせてください」とお願いし、何件か動かして数字を取る
- 取れた数字で顧客数を増やした場合を試算し、上限に合わせて設計を直す
原本も、この型の新規事業を1つ立ち上げ、テストを経て現在も改善を続けています。完成してから出すのではなく、テストしながら直す順番で進んでいます。
「自分の時間を使わずに提供できる形が、自分の事業で組めるのか」を一緒に整理したい方は、ノルツの起業支援へLINEまたはお問い合わせフォームからご相談ください。月額顧問型で、事業の設計から毎月伴走しています。
よくある質問
一人社長が自分の稼働に依存しない事業を選ぶと、品質が下がりませんか?
稼働に依存しない形にするというのは、手を抜くことではなく、提供の単位を仕組み側に移すことです。ノルツ株式会社代表・原本の場合は、AIで業務を自動化し、その自動化した業務自体をサービスとして提供する形を取りました。この場合、品質を担保するのは毎回の手作業ではなく、設計とテストになります。
営業代行と採用代行は、どういう点で稼働が軽いのですか?
原本は、営業代行はつなぐだけ、採用代行は紹介するだけで成立する例として挙げています。納品物を毎回一から作るのではなく、人と人、人と会社を結ぶことが提供の中心になるためです。一方で、接点や母集団の広さが増やせる件数に関わってくるため、その点を先に見ておくと判断しやすくなります。
AIを使ったサービスで、事前に確認しておくべきことは何ですか?
1件あたりの消費量と、使っているツール側の利用量の制限です。原本のケースでは、テストの中でトークンの消費が意外と大きいことと、Claudeの5時間ごとの利用量の制限に、企業数を増やすとかかってしまう点が見えてきました。ツールの仕様は変わるため、最新の公式情報で確認してください(執筆時点=2026年9月時点)。
テストは何件くらいやればいいですか?
件数の正解はありませんが、原本は「テストをさせてください」とお客様にお願いし、何件かテストを実施したことで、トークンの消費量と同時に対応できるお客様の数の上限が見えたと語っています。1件あたりの負荷と上限が数字で分かる程度まで動かすのが目安になります。
参考・出典
- Anthropic(Claude 提供元)公式サイト(2026年9月時点)
- Claude 利用量・プランに関する公式サポート情報(2026年9月時点)
