この記事の要点
開業届は準備の最後に回しても進められます。先に時間をかけたいのは「何を売るか」「理念」「事業計画」と、営業から契約・提供・入金までのフロー設計。会社に在籍しているうちにそこまで進め、副業が認められている会社なら辞める前に開業届を出して収入を作る形もとれます。手続きは中身が決まってからで間に合います。
公開日 2026-11-06 執筆:原本 昌悟(ノルツ株式会社 代表取締役)
開業届はいつ出すのがいい?最後に回しても進められるのはなぜ?
開業届は、準備の一番最後に回しても事業づくりは進みます。代表・原本は個人事業のスタート時に、開業届を出す→ホームページと名刺を作る→交流会で営業する、という順で動き、事業設計や戦略を先に置かないまま走り出しました。届出は手続きであって、売るものや売り方を決める作業ではないためです。
代表・原本は、創業期の進め方をこう振り返っています。
「開業届を出すところだけ一番最後にやればいいのかなっていうぐらい」(ノルツ株式会社代表・原本)
開業届を出しても、「何を売るか」「いくらで売るか」「誰にどう届けるか」は決まりません。逆に、売るものと売り方が決まっていれば、届出はあとから短時間で済ませられます。順番を入れ替えるだけで、準備期間を中身づくりに使えます。
開業届で決まること・決まらないこと
| 項目 | 開業届で決まるか |
|---|---|
| 事業を開始したという税務上の届出 | 決まる |
| 屋号(記載する場合) | 決まる |
| 何を売るか・理念・事業計画 | 決まらない(自分で考える) |
| 営業から契約・提供・入金までのフロー | 決まらない(自分で設計する) |
| 会う人・出る場・マーケティング施策 | 決まらない(自分で組み立てる) |
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は税務署へ提出する書類とされています(2026年9月時点)。提出期限や書式などの取り扱いは変わりうるため、最新の情報は国税庁の公式情報で確認し、判断に迷う点は税理士など専門家に相談してください。
会社を辞める前に、どこまで準備を進められる?
在籍しているうちに進められるのは、事業の中身とフローの設計です。代表・原本は「辞める前にできるだけ準備を進めた方がいい」と話しており、具体的には売るもの・理念・事業計画に時間をかけること、事業用の口座を分けること、営業から入金までの流れを描いておくことを挙げています。
「辞める前にできるだけ準備進めちゃった方がいいと思います。」(ノルツ株式会社代表・原本)
代表・原本が、自分の経験から整理した準備の並べ方は次の順番です。
- 何を売るかを決める/理念をことばにする/事業計画に時間をかける
- 営業から契約・サービス提供・入金までのフローをイメージする(契約書もここで用意しておく)
- 屋号を決める
- 事業用の口座を分ける
- ホームページ・名刺などの道具をそろえる
- 開業届を出す
口座について、代表・原本はこう話しています。
「事業の口座はちゃんと分けた方がいいと思います。」(ノルツ株式会社代表・原本)
名義が自分の名前のままになる場合でも、事業のお金と生活のお金は分けておく。これは在籍中でも動ける準備です。1と2に時間をかけられるのが、会社員でいるうちの一番の利点になります。
副業が認められている会社なら、辞める前に開業届を出してもいい?
副業OKの会社であれば、辞める前に開業届を出して収入を得る形もとれます。代表・原本は、副業が認められているなら在籍中に開業届を出して収入を作っておく進め方を挙げています。独立後に収入が一度ゼロになる期間を、先に小さく埋めておける考え方です。
この順番の利点は、「開業届は最後でいい」という原則と矛盾しません。売るものと売り方が決まった段階で届出を出し、在籍中に実際の受注と入金まで一度通してみる、という並べ方になるからです。営業から入金までの流れを本番で確かめられるので、辞めた後に慌てて資料や契約書を整える必要が減ります。
在籍中に開業届を出す場合の確認ポイント
- 自社の就業規則で副業がどう扱われているかを確認する
- 副業で得た収入の税務上の取り扱いを、最新の公式情報で確認する(2026年9月時点でも制度は変わりうるため、国税庁の情報や税理士への相談を前提にする)
- 本業と競合しない範囲・時間配分を先に決めておく
副業が認められていない場合は、在籍中は収入を作る手前まで——つまり事業計画、フロー設計、契約書の準備、会う人のリストアップまで——を進め、開業届と収入づくりは退職後に回す形になります。どちらでも、中身を先に固める順番は変わりません。
辞めた後のスケジュールは、どこまで決めておくといい?
辞めた後の予定も、在籍中に描いておけます。代表・原本が理想として挙げているのは、退職後のスケジュール、どういう場に出てどういう人と会うか、人脈の作り方、マーケティング施策までを辞める前に考えておくことです。
代表・原本自身は、開業届を出してホームページと名刺を作った後、いきなり交流会などで営業を開始しました。その結果、名刺交換がアポイントにつながらない状態に直面しています。
「ホームページと名刺作っていきなり交流会行っても、なんか売れるわけじゃないですよね。」(ノルツ株式会社代表・原本)
この経験から整理されたのが、「出る場」と「会う人」まで先に考えておく、という準備項目です。在籍中に書き出せるのは次のような内容です。
- 退職後、最初の数か月で何をする月なのか(営業に充てる/制作に充てる など)
- どういう場に出るのか(どんな集まりに、どのくらいの頻度で)
- その場で誰と会いたいのか、会った後どうつなげるのか
- 人脈をどう作っていくのか
- 打つマーケティング施策の候補
場に出る前に「誰に会って、その後どうするか」まで決めておくと、名刺交換が次の一歩につながりやすくなります。ここは在籍中、机の上で進められる準備です。
起業後の計画が予定通りに進まないときは、どう判断する?
起業後は想像通りには動かない前提で、二手三手先の別パターンを用意しておく進め方があります。代表・原本は、打った施策が成功か失敗かを数字で判定できる状態を先に作っておくことを挙げています。
「起業後に絶対にイメージ通りにならないと思うんですね。想像通りには動かないと思います。」(ノルツ株式会社代表・原本)
だからこそ必要になるのが、判定の基準です。
「1個目の施策で動いた時に、その施策が成功なのか失敗なのかっていうのを数字で判定できる状態を作っておく」(ノルツ株式会社代表・原本)
辞める前に決めておけるのは、次の3点です。
- 最初に打つ施策を1つ決める
- その施策を何の数字で見るかを決める(問い合わせ数、商談数、受注数など)
- どの水準なら続け、どの水準なら次のパターンに切り替えるかという撤退基準を先に決める
判定の物差しが先にあると、思った通りに動かなかったときに「気持ち」ではなく数字で次の手に移れます。PDCAを回しながら進めるための土台になります。
準備の順番を後ろから進めてしまったとき、何から立て直す?
立て直しの起点は、営業から入金までのフロー設計と契約書です。代表・原本は、道具を先に作って営業を始めたため、キャンペーンやチラシ、営業の説明資料を後追いで用意することになり、契約が決まりそうになった段階で契約書が整っていないことに気づいた経験を語っています。
「結構後手後手、泥縄的対応って言うんですかね、でやってしまったという苦い経験がございます。」(ノルツ株式会社代表・原本)
同じ状況は、順番を決めないまま走り出すと誰にでも起こります。原因は、道具(ホームページ・名刺)が先に完成して「動ける気がする」状態になることです。そこで、受注した後に何が必要かを紙に書き出すと、足りないものが一気に見えます。
先に描いておく流れ
- 営業(どこで誰に、何を見せて話すか)
- 契約(契約書の雛形、見積の出し方)
- サービス提供(納品までの手順)
- 入金(請求のタイミング、入金確認)
契約書については、代表・原本は作り方と確認の線引きを分けて考えています。
「契約書に関しては、AIに作らせたからオッケーではなくて、絶対に自分の目でちゃんと読んだ方がいいです。」(ノルツ株式会社代表・原本)
作成そのものはAIを使って進められます。そのうえで、中身は自分で読む。代表・原本は「読むと結構怖いなっていうことが書かれてる契約書も中にはあったりします」とも話しており、条件の確認までを自分の仕事として残す形です。
準備はどこまでやったら踏み出していい?
準備はどこまでやってもキリがないため、完璧になるのを待たずに踏み出す考え方もあります。代表・原本は、やりたいことがあるなら起業してよいとしたうえで、収入が一度ゼロになることへの計画だけは立てておくべきだと話しています。
「起業準備ってどこまでやってもキリが正直ないので、完璧に準備ができたら起業するではなくて、やりたいことがあるんだったら起業する、しちゃっていいと思います。」(ノルツ株式会社代表・原本)
一方で、無条件に勢いだけで進める話ではありません。
「収入も1回ゼロになっちゃうので、それでも大丈夫なように計画は一応した方がいいですけれども、熱意を持って歩を進めるのもすごい大事だと思いますんで。」(ノルツ株式会社代表・原本)
この2つを合わせると、踏み出す条件はシンプルに整理できます。
- 売るものと売り方(理念・事業計画)が、自分のことばで説明できる
- 営業から入金までの流れと契約書が用意できている
- 最初の施策と、その成否を見る数字が決まっている
- 収入が一度ゼロになっても生活が回る計画がある
この4つが揃ったら、開業届を出す。届出はそこで初めて、手続きとして片付ければ十分です。事業計画書の作成や、起業系セミナーへの参加も、在籍中に進められる準備として検討する価値があります。
よくある質問
開業届は事業を始める前に出さないといけませんか?
開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は税務署へ提出する書類とされており、提出期限などの取り扱いは変わりうるため、2026年9月時点の最新情報を国税庁の公式情報で確認してください。実務の進め方としては、ノルツ株式会社代表・原本は「開業届を出すところだけ一番最後にやればいいのかなっていうぐらい」と話しており、売るものや営業から入金までの流れを先に固める順番をすすめています。
副業で収入を得てから独立する場合、何を確認しておけばいいですか?
まず自社の就業規則で副業の扱いを確認し、そのうえで収入の税務上の取り扱いを最新の公式情報で確認するのが前提になります。副業が認められている会社なら、辞める前に開業届を出して収入を得ておく進め方もとれます。制度や税の扱いは変わりうるため、判断に迷う点は税理士など専門家に相談してください。
ホームページと名刺はいつ作ればいいですか?
売るものと売り方が決まった後です。ノルツ株式会社代表・原本は、開業届を出してホームページと名刺を作り、いきなり交流会で営業を始めた結果、名刺交換がアポイントにつながらない状態に直面しました。先に「誰に何をいくらで売るか」「どの場で誰に会うか」を決めておくと、同じ道具でも次の一歩につながりやすくなります。
契約書はAIで作ってもいいですか?
作成にAIを使うことはできます。ノルツ株式会社代表・原本は「AIに作らせたからオッケーではなくて、絶対に自分の目でちゃんと読んだ方がいい」と話しており、作成は効率化しても、条件の確認は自分で行う線引きをしています。内容に不安があるときは専門家に確認してください。
辞める前にスケジュールはどこまで決めておくべきですか?
ノルツ株式会社代表・原本は、退職後のスケジュール、どういう場に出てどういう人と会うか、人脈の作り方、マーケティング施策までを辞める前に考えておくのが理想だと話しています。あわせて、最初の施策の成否を数字で判定できる状態を先に作っておくと、予定通りに進まないときに次の手へ切り替えやすくなります。
参考・出典
- 国税庁(個人事業の開業・廃業等に関する手続の案内)(2026年9月時点)
- 中小企業庁(創業・起業支援に関する情報)(2026年9月時点)
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