起業の準備は何から?営業資料を後回しにして学んだこと

独立前の準備期間に何をどこまでやるか、判断のしかたを整理する

本記事は、ノルツ株式会社代表・原本 昌悟の実体験(取材で語られた内容)に基づいています。数字や当時の状況は盛らず、語られたとおりに書いています。

この記事の要点

起業の準備は、ホームページや名刺を作ることより先に「誰に、何を、いくらで売るか」がマーケットで成立するかを確かめると進めやすくなります。私は最短で会社を辞めて準備がほぼない状態で開業し、営業資料や訴求ポイントを作りながら整えるのに半年近くを使いました。お金の準備は時間をかけ、事業内容は動きながら直す。これが私の判断の分け方です。

公開日 2026-10-02 執筆:原本 昌悟(ノルツ株式会社 代表取締役)

名刺とノートを前に、起業準備の優先順位を書き出している日本人の起業家

起業の準備は何から始めればいい?

最初に手をつけると効きやすいのは、生活を支えるお金の準備と、「誰に・何を・いくらで売るか」がマーケットで成立するかの確認です。ホームページ・名刺・チラシ・営業資料・契約書・訴求ポイントといった作り物について、私はその次に置く順番で進めました。後から整えながら進めることもできます。

私(ノルツ株式会社代表・原本)は、起業しようと思ったときに、最短で会社を辞めることを優先しました。「起業しようと思ったときに、最短で会社を辞めたいということで辞めて、それから起業していった」という順番です。結果として、起業前の準備はほとんどないまま、ホームページ制作業としてスタートしました。

開業してすぐに作ったのは、ホームページと名刺の2つです。営業のやり方が分からなかったので、交流会に参加するところから営業を始めました。動き出してから「これが無い」と気づいたのは、次の4つでした。

  • チラシ
  • 営業資料
  • 契約書
  • キャンペーンなどの訴求ポイント

この経験を踏まえて、いま自分が同じ立場で順番を組み直すなら、こう並べます。

  1. お金の準備をする(収入が無い期間でも動ける状態をつくる)
  2. 誰に・何を・いくらで売るのかを、実際の相手に当てて確かめる
  3. 最低限の看板(ホームページ・名刺)を用意する
  4. 営業資料・チラシ・契約書・訴求ポイントを、売る場面を想定して用意する
  5. 営業しながら、反応に合わせて中身を直し続ける

作り物は一度作って完成するものではなく、営業しながら直していく前提で持っておくほうが早く進みます。順番を決めておくと、「何から手をつけるか」で止まる時間が短くなります。

独立の準備期間はどれくらい取ればいい?

私は最短で会社を辞めたので、準備期間をほとんど取りませんでした。期間を考えるときは「お金の準備」と「事業内容の準備」を分け、お金の準備には時間をかけ、事業内容の準備は長く取りすぎないという分け方をしています。

お金の準備は時間をかけてよい部分

「起業したら大体半年ぐらいは収入なくても動けるように準備するって言われている」──これは世間で言われている目安として、私も意識している考え方です。私自身の実績数値ではありませんが、事業計画とは切り離して、収入が無くても動ける状態をつくること自体に時間をかける価値はあると考えています。お金の不安が薄いほど、営業やサービスの判断を落ち着いて下せます。

事業内容の準備に時間をかけすぎるとマーケットが動く

一方で、「何を売るか」「どう売るか」を練り込むことに時間をかけすぎると、その間にマーケットのほうが変わってしまうリスクがあります。私の場合、ホームページ制作事業でスタートして、会社を作ってから半年ほどでコロナ禍に入りました。コロナ禍が明けた頃にはChatGPTが日本中に普及し、そこから2年ほどでAIエージェントによる業務自動化が進みました。ホームページ制作の市場でも、「無料でいいので実績作りのために制作させてください」という人が溢れる状況になり、そのまま同じやり方でいくのはほぼ不可能だと感じるマーケットになっていました。

準備期間を「何ヶ月」と一律に決めるより、お金の準備は厚く、事業内容の準備は動きながら更新する。この二層で考えると、期間の長さそのものに悩む時間を減らせます。

なお、創業期の相談窓口や支援制度は公的機関が案内しています(2026年9月時点)。制度の内容や要件は変わるため、利用を検討する場合は最新の公式情報や専門家で確認してください。

営業資料は起業前に用意しておくべき?

用意しておくと、営業の立ち上がりは軽くなると感じています。私は営業資料・チラシ・契約書・訴求ポイントが無いまま交流会で営業を始め、都度作って直しながら形にするのに半年近くを使いました。

私が実際に営業を始めたとき、手元にあったのはホームページと名刺だけでした。交流会に参加して人と話しても、その場で渡せるチラシがなく、提案を伝えるための営業資料もなく、話が進んだときの契約書も、決め手になるキャンペーンなどの訴求ポイントもありませんでした。必要だと気づくたびに作り、営業しながら修正していきました。

「そこで結構半年近く使ってしまったので、やっぱり事前にちゃんと準備していれば、もっとスムーズに営業できたのかなというふうに反省する部分はあったりします。」(ノルツ株式会社代表・原本)

この半年は無駄だったわけではなく、実際の反応を見ながら資料の中身を直したので、営業のやり方そのものは固まっていきました。ただ、最初から手元にあれば、その分だけ早く同じ場所に立てたとは思います。起業前にまとまった時間が取れるなら、次のものを一度書き出しておくと立ち上がりが変わります。

  • 営業資料:誰の、どんな状況を、どう変えるサービスなのかを1本の流れで説明できるもの
  • チラシ:その場で渡せて、あとから連絡先を思い出してもらえるもの
  • 訴求ポイント:初回の依頼を決めやすくする条件(キャンペーンなど)
  • 契約書:依頼が決まったときに、条件を書面で確認できるもの(内容は専門家に確認する)

完成度を上げ切る必要はありません。一度作って営業に持ち出し、反応を見て直す。その回転を早めるための最初の一式、という位置づけで十分です。

交流会のような場で名刺を手に相手と話している日本人のビジネスパーソン

準備が完璧に整うまで待ったほうがいい?

私は、完璧に整った状態を待つ発想だと動き出せなくなると考えています。マーケットに出れば想定していなかったことが起きるので、最低限を用意したら、改善しながら進める前提で始めるほうが現実に合います。

「準備が整ってから起業しようというふうに発想した場合は、おそらく起業することができないんじゃないかな」

「起業の準備って、おそらく完璧に準備ができたという状況が存在しないんじゃないかな」

「予想外のことしか起きないって言っていいと思います。もう予想外だらけですね。」(ノルツ株式会社代表・原本)

私自身、準備がほとんどない状態で始めたことで、すぐに行動を開始できました。営業しながら足りないものを足し、反応を見て直すという進め方になり、結果的にマーケットの想定外の反応に合わせて事業を調整する姿勢が身についたと感じています。

だからこそ、準備は「終わらせるもの」ではなく「回し続けるもの」として設計すると進みます。具体的には、こう置き換えると判断が速くなります。

    li>「完成したら営業を始める」→「営業に持ち出して、その日のうちに直す」
  • 「全部そろえてから動く」→「次の1件に必要なものだけ先に作る」
  • 「想定どおりに進める」→「想定外が来たら、そこを次の改善点にする」

いま準備が中途半端で不安だという人は、よくある状況にいるだけです。次の1件の商談で使うものから作れば、準備はそのまま営業活動になります。

店舗ビジネスと無形商材で、準備の掛け方はどう変える?

一度始めると事業転換が難しい業態ほど、綿密な準備が必要です。店舗は外装・内装を大きく変えられないため準備を厚く、無形商材はピボットしやすいため最低限の準備で動き出し、反応を見て変えていく。この使い分けを私は判断軸にしています。

比較軸店舗など転換が難しい業態無形商材(サービス・制作など)
事業転換のしやすさ店舗を建てると外装・内装を大きく変えられず、転換はほぼ難しい提供内容や売り方を変えやすく、ピボットしやすい
準備の掛け方綿密に。始める前に確かめる量を増やす最低限を用意して動き出す
進め方事前のリサーチで、買う人と価格の見込みを詰める営業しながら反応を受けて改善を重ねる
注意点準備不足のまま始めると軌道修正の幅が狭い準備に時間をかけすぎるとマーケットが変わる

私はホームページ制作という無形商材で始めたので、準備を後回しにしても改善で追いつけました。もし店舗のように後から変えにくい業態だったら、同じ進め方はできなかったと思います。自分の事業が「後から変えられるのか、変えられないのか」を先に見極めると、準備にどれだけ時間を使うべきかが決まります。

準備段階のリサーチでは、何をどう聞けばいい?

「どう思いますか」ではなく「いくらなら払うか」を聞くと、判断に使える答えが返ってきます。ペルソナに実際の商品やサービスを見せたり食べてもらったりしたうえで、お金になるかどうかまで踏み込んで質問するのが、準備として有効なやり方です。

「この商品とかサービスどうですか、どう思いますか」ぐらいの質問だと、「いいんじゃないですか」っていう忖度した返答がきてしまうと思います」

「もう具体的にいくらだったら払うのか、これはお金になるのかならないのか、そこまで突き詰めて質問していった方がいいんじゃないかな」(ノルツ株式会社代表・原本)

とくに店舗ビジネスのように後から変えにくい事業では、想定しているお客さま像(ペルソナ)に実際の商品・サービスを見せる、食べてもらうといった形で体験してもらい、そのうえで価格を聞くところまでやる価値があります。聞き方を具体的にするだけで、集まる情報の質が変わります。

聞き方の置き換え例

  • 「このサービス、どう思いますか」→「これ、いくらなら払いますか」
  • 「あったら便利だと思いますか」→「今、同じことにいくら使っていますか」
  • 「興味ありますか」→「今日この場で申し込むとしたら、何が足りませんか」

好意的な感想は集めやすい一方で、そのまま売上の見込みにはなりません。お金の話まで踏み込んだ答えを集めておくと、価格と訴求ポイントを決めるときの材料になります。

結局、起業準備の目的をどう定義すればいい?

準備の目的は、ホームページや名刺やチラシを作ることそのものではなく、自分が考えている事業内容と、マーケットの実際の反応とのズレをなくすことです。この定義に立つと、何を先に作るべきかが自然に決まります。

私は、ホームページと名刺だけで営業を始め、そこから営業資料・チラシ・契約書・訴求ポイントを作りながら半年近くを使いました。振り返って言えるのは、足りなかったのは「物」ではなく、「自分の売り方がマーケットにどう受け取られるか」の情報だったということです。物は反応が分かれば作れますが、反応は動かないと分かりません。

準備を「ズレをなくす作業」として並べ直す

  1. 誰に売るのかを1人の具体像まで絞る
  2. その人に、実物や提案を見せて反応を得る
  3. 「いくらなら払うか」まで聞き、価格と訴求ポイントを決める
  4. 決まった内容で営業資料・チラシを作る
  5. 営業に持ち出し、返ってきた反応でまた直す

この順番なら、作ったものが最初から実際の反応に合っています。私は逆の順番で進めたぶん改善に時間を使いましたが、その過程で営業のやり方は固まりました。いま準備の途中にいる人は、まず「誰に・いくらで」を確かめる1回の場を設定するところから始めると、次の一手が見えます。

何から手をつけるかを一緒に整理したい場合は、LINEまたはお問い合わせフォームからご相談ください。

よくある質問

起業前に最低限そろえておくものは?

ノルツ株式会社代表・原本が開業時に持っていたのはホームページと名刺の2つで、営業を始めてからチラシ・営業資料・契約書・キャンペーンなどの訴求ポイントが必要だと気づきました。最低限の看板に加えて、この4点を先に用意しておくと営業の立ち上がりは軽くなると感じています。契約書の内容は専門家に確認してください。

独立前にお金はどれくらい準備すべき?

「起業したら大体半年ぐらいは収入なくても動けるように準備する」と言われている、という一般的な目安があります。これは特定の実績数値ではありませんが、お金の準備は事業計画とは別に、時間をかけて整えておく価値がある部分です。

準備が整わないまま起業しても大丈夫?

事業の性質によります。無形商材はピボットしやすいため、最低限を用意して動き出し、反応を見て変えていく進め方が取れます。一方、店舗のように外装・内装を大きく変えられず事業転換が難しい業態は、綿密な準備が必要です。

準備期間を長く取るデメリットは?

事業内容の準備に時間をかけすぎると、その間にマーケット自体が変わることがあります。ホームページ制作事業で開業した原本の場合、会社を作ってから半年ほどでコロナ禍に入り、その後ChatGPTが普及し、2年ほどでAIエージェントによる業務自動化が進みました。

リサーチで聞くべき質問は?

「どう思いますか」という聞き方は忖度した回答を招きやすいため、「いくらなら払うか」「これはお金になるのかならないのか」まで踏み込んで聞くほうが、判断に使える答えが集まります。

参考・出典

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