創業期の撤退基準の決め方|施策を数字で判定して次の手へ

始める前に判定の線と別パターンを置いておく

私自身が創業期に打った施策と、その判定のしかたを後から整えたときのことをもとに書いています。

この記事の要点

創業期の撤退基準は、施策を始める前に「何を数えるか」「いつ判定するか」「続ける・形を変える・いったん止める、のどれにするか」を一行で決めておくことです。判定できる数字が置いてあれば、結果が出た時点ですぐ次の手に移れます。あわせて二手三手先の別パターンを並べておくと、判定日が終わりではなく切り替えになります。

公開日 2026-11-08

ノートに施策の判定に使う数字を書き出している日本人の手元

創業期の「撤退基準」とは、具体的に何を決めておくこと?

撤退基準とは、施策を始める前に「どの数字を数えるか」「いつ判定するか」「その結果で続ける・形を変える・いったん止めるのどれにするか」を決めておくことです。成果の良し悪しを感覚ではなく数字で見られる状態をつくる、という意味で使っています。難しい分析は要りません。一行のメモで足ります。

私が創業期に大事だと思うようになったのは、次の一点です。

1個目の施策で動いた時に、その施策が成功なのか失敗なのかっていうのを数字で判定できる状態を作っておく

私は個人事業でスタートしたとき、開業届を出し、ホームページと名刺を作り、そのまま交流会などに行って営業を始めました。名刺交換をしてもアポイントにつながらず、そこからキャンペーンやチラシ、営業の説明資料を後追いで用意することになりました。困ったのは「うまくいっていない」という感覚はあるのに、何がどれだけ足りないのかを示す数字を自分が持っていなかったことです。

この経験から考えるようになったのは、先に「交流会に出るなら何を数えて、どうなったら次に移るか」を一行書いておけば、同じ行動でも次の手に早く移れる、ということです。だから私は、施策を始める日にその一行を先に書いておく形を取りたいと考えています。

撤退基準が担っている役割

  • 施策を感覚ではなく数字で振り返れるようにする
  • やめ時・変え時を、気分が落ちる前に決めておく
  • 次の手を考え始めるタイミングを前倒しにする

交流会そのものの準備については名刺交換がアポにならないときに、交流会の前に決めておきたいことでも書いています。

施策の成功・失敗は、どの数字で判定すればいい?

創業期は売上が立つまでの期間が読みにくいため、売上だけで判定しようとすると手応えが測りづらい、と私は考えています。そこで「自分が動いた量(行動量)」と「次の段階に進んだ数」の2つを分けて置く形にしています。この2段にすると、動けているかどうかを自分で数えられます。

私が実際に打った施策(交流会、ホームページ、名刺、キャンペーン、チラシ、営業の説明資料)を、数える単位に分けると次のように整理できます。以下の表は、私が後から整理した「何を数えるか」の型であって、実績値ではありません。数字そのものは、自分が用意できる時間と予算から決めるものだと考えています。

施策行動量として数える数字次の段階として数える数字
交流会に出る出た回数/名刺交換の枚数後日こちらから連絡した件数/アポになった件数
ホームページ公開したページ数/訪問数問い合わせの件数
チラシ配った枚数/配った範囲反応・問い合わせの件数
営業の説明資料提案で使った回数提案後に次回の打ち合わせが決まった件数
キャンペーン告知した相手の数申し込みの件数

どの数字をいくつに置くかは人それぞれなので、表はあくまで数え方の見本として使ってください。

数字を2段に分ける理由

  • 行動量が足りないのか、行動の中身が合っていないのかを切り分けられる
  • 行動量は足りているのに次段階がゼロなら、変えるのは量ではなく中身だと分かる
  • 行動量自体が予定の半分なら、施策の良し悪し以前に実行の設計を直す段階だと分かる

この切り分けができると、「交流会が合わない」なのか「交流会での話し方と渡す物が合っていない」なのかを、気分ではなく数字で言えるようになります。

撤退基準はどんな手順で決める?

目的を一つに絞り、数える数字を2つ決め、判定する回数か期限を先に置き、結果に対する行動を3つ(続ける・形を変える・いったん止める)書く、という順番です。所要時間は施策一つにつき数分で、始める前に書き切るのが大事です。

  1. 施策の目的を一つに絞る。アポを取るのか、問い合わせを増やすのか、名前を知ってもらうのか。複数あると判定ができなくなります。
  2. 数える数字を2つ決める。自分が動いた量と、次の段階に進んだ数。両方とも自分で数えられるものにします。
  3. 判定する回数か期限を先に決める。「交流会に出る回数」「チラシを配る枚数」「期間」のいずれかで、どこまでやったら立ち止まるかを決めます。
  4. 結果に対する行動を3つ書く。続ける/中身を変えて続ける/いったん止めて別の施策に移る。この3つのどれを選ぶかの線を、事前に書いておきます。
  5. 判定日をカレンダーに入れる。判定の予定が入っていると、振り返りが後ろにずれません。

判定の回数は、可処分時間から逆算する

基準の数字は、他人の平均ではなく、自分が用意できる時間とお金から逆算するのが現実的です。私は次の順で出しています。

  1. この施策に使える時間を「週に何時間か」で書き出す(平日の夜と土日のうち、実際に空けられる枠だけを数える)
  2. 施策1回あたりにかかる時間を見積もる(交流会なら移動と後日連絡まで、チラシなら作成と配布まで含める)
  3. 週の時間を1回あたりの時間で割り、無理なくこなせる回数を出す
  4. その回数に達する日付を判定日にする。お金のかかる施策なら「ここまで出したら残りは別の施策に回す」という上限額を先に書いておく

この順で出した回数と日付なら、自分の生活に合った線になるので守りやすくなります。お金のかかる施策の判断についてはお金のかかる集客との付き合い方でも触れています。

小さなオフィスで資料とノートパソコンを見ながら話し合う日本人2人

なぜ「二手三手先の別パターン」を先に考えておくのか?

起業後は想像通りには動かないからです。一手目が思った通りにならなかったときに、次の候補が手元にあれば、判定の直後から次に移れます。別パターンは一手目を決める日に一緒に書いておくのが扱いやすいです。

私はこう考えています。

起業後に絶対にイメージ通りにならないと思うんですね。想像通りには動かないと思います。

私の場合、事業設計や戦略、マーケティングの方法を事前に考えずに動いたため、次の手を考え始めるのが結果の後になっていました。だからこそ、一手目を決める日に二手目の候補まで書いておくのがよいと考えています。

別パターンの並べ方(一手目を決めたときに一緒に書く)

  • 中身を変える:同じ場に出続けるが、渡す物・話す順番・名乗り方を変える
  • 相手を変える:同じやり方のまま、声をかける相手の層を変える
  • 入口を変える:直接の営業から、紹介をお願いする形に切り替える
  • いったん止める:この施策は保留にして、別のチャネルに時間を移す

一手目を始める日に、この4つのうちどれを二手目の候補にするかまで書いておくと、判定が「終わり」ではなく「切り替え」になります。

創業期のPDCAは、どう回せば続く?

回す単位を小さくして、判定日を先に置くことです。施策は一度に一つ、指標は二つまで。数字で判定できる状態をつくっておくことが、PDCAのC(検証)が止まらない条件になります。

回し方の最小構成

  1. P:施策を一つ決め、数える数字2つと判定の回数(期限)、結果に対する行動3つを書く
  2. D:決めた回数・期間までは、やり方を途中で変えずに実行する
  3. C:判定日に数字を並べ、行動量と次段階のどちらが足りないかを見る
  4. A:事前に書いた3つの行動から一つ選び、次の施策の撤退基準をまた書く

途中でやり方を変えたくなることはあります。そのときは、変えたい内容をメモに残して、判定日に「中身を変えて続ける」の候補として使うと、やったことと結果の対応が崩れずに次へ活きます。

判定を「数字で」やる意味

私が創業期に手こずったのは、うまくいっていない感覚はあるのに、それを説明できる数字が手元になかったときでした。数字があれば、立ち止まった理由を自分にも、相談相手にも同じ言葉で説明できます。創業期は判断の材料が少ないぶん、自分で数えた数字が一番早く手に入る材料になります。

基準づくりに時間をかけすぎないためには?

撤退基準は一行で足ります。数える数字2つと、判定の回数(期限)と、結果に対する行動3つ。それ以上作り込むより、始めて数えたほうが早く分かります。準備はどこまでやってもキリがない前提で、走りながら整えていく形がよいと思っています。

私はこう思っています。

起業準備ってどこまでやってもキリが正直ないので、完璧に準備ができたら起業するではなくて、やりたいことがあるんだったら起業する、しちゃっていいと思います。

同時に、収入が一度ゼロになることへの計画は必要だと考えています。そのうえで、熱意を持って歩を進めるのも大事だと思っています。撤退基準は、慎重さと勢いを両立させるための道具です。基準があるから、思い切って一手目を打てる、という順番で使うものだと捉えています。

今日からできる形

  • 次に打つ施策を一つ書く
  • その施策で数える数字を2つ書く
  • 判定する回数か期限を書く
  • 続ける/中身を変える/いったん止める、の線を書く
  • 判定日をカレンダーに入れる

この5行が、創業期の撤退基準の最小単位です。創業期の一般的な情報は公的機関の窓口や情報サイト(中小機構のJ-Net21など)でも確認できます(2026年9月時点。制度や支援策は変わるため、最新の公式情報で確認してください)。

よくある質問

撤退基準は厳しめと緩めのどちらで決めるべきですか?

数字の高さよりも、「超えたら必ず立ち止まる」と決められる線かどうかが大事です。自分が用意できる時間とお金の上限から逆算し、そこに達したら判定する、という形にすると守りやすくなります。

売上だけで施策の成否を判定してはいけませんか?

創業期は売上が立つまでの期間が読みにくいので、売上一本だと手応えが測りづらい、と私は考えています。そこで、自分が動いた量(回数・枚数)と、次の段階に進んだ数(アポ・問い合わせの件数)を分けて置く形にしています。この2段にすると、どこを直せばよいかが見えやすくなります。

撤退基準に達したら、その施策は完全にやめるということですか?

選択肢は3つです。続ける/中身を変えて続ける/いったん止めて別の施策に移る。基準に達したときに、この3つのどれを選ぶかを事前に書いておくと、判定が切り替えのきっかけになります。

施策が思った通りに動かないのは、計画が悪かったからですか?

起業後は想像通りには動かないものだと私は考えています。だからこそ、一手目を決める時点で二手三手先の別パターンを並べておき、判定のあとすぐ次に移れるようにしておくほうが現実的です。

参考・出典

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