経営者の孤独とどう向き合うか。創業期に相談相手がいないときの整え方

「一人で決断する職業」という前提から考える相談相手の使い分け

本記事は、ノルツ株式会社代表・原本(原本 昌悟)の実体験と、取材で語られた見解に基づいて構成しています。

この記事の要点

創業期に相談相手がいないと感じるのは、会社の経営状態やクライアントの話を従業員に共有しづらいという構造によるものです。解き方は「全部を打ち明けられる一人」を探すことではなく、相談の目的を思考整理と決断材料集めに置き直し、気持ちを吐き出す場(家族・経営者同士)、数字を詰める場(社外CFO・税理士・会計士・金融機関)、判断を壁打ちする場(AI・コーチやコンサル)に分けて複数持つことです。

公開日 2026-10-14 執筆:原本 昌悟(ノルツ株式会社 代表取締役)

デスクでノートに悩みを書き出しながら考え込む日本人の経営者

創業期の経営者はなぜ「相談相手がいない」と感じるのか?

会社の経営状態やクライアントに関する話は、従業員に共有しづらい性質があります。相談したい内容ほど社内で話せないため、創業期は「相談相手がいない」と感じやすくなります。これは個人の性格ではなく、立場からくる構造的なものです。

経営者が抱える悩みは、資金繰り、取引先との関係、価格の決め方、人の採用や離脱など、会社の内部事情と直結したものが多くを占めます。ノルツ株式会社代表・原本は、経営者は会社の経営状態やクライアントに関する話を従業員にしづらい、と語っています。話すこと自体が不安を広げたり、誤解を生んだりする可能性があるためです。

さらに、創業期は一人社長や数名の規模であることが多く、社内に同じ目線で数字を見ている人がいません。結果として、判断の材料も、迷いも、全部が自分の頭の中だけにたまっていきます。

「経営者って1人でそれを考えて決断しないといけないというような、職業なんじゃないかなと思います。」(代表・原本)

この状態はよくあるもので、創業期に限った話でもありません。大事なのは「話せない自分」を責めることではなく、社内で話せない前提に立って、社外にどんな置き場所を用意するかを先に決めておくことです。次のセクション以降で、その置き場所の作り方を具体的に整理します。

「一人で決断する職業」という前提をどう受け止めればいいのか?

最終的に決めるのは経営者自身である、という前提は変わりません。ただし「決断が一人」であることと「考える過程まで一人」であることは別です。過程を誰かと共有するだけで、孤独の重さはかなり変わります。

代表・原本は、どちらに進むかは最終的に経営者自身が決めることになる、という前提を置いたうえで相談の話をしています。この前提を受け入れると、相談相手に期待する役割が変わります。「代わりに決めてくれる人」を探すのをやめ、「決めるための材料を一緒に並べてくれる人」を探すことになるからです。

また、本音を全部話せる相手を一人見つけようとすると、ハードルは高くなります。

「本当に心の中全部打ち明けられるような相手がいたら、そりゃあ素晴らしいことなんですけれども、なかなかそれは難しいんじゃないかなと思います。」(代表・原本)

一人に全部を求めるのではなく、話す内容によって相手を分ける。この受け止め方に切り替えると、いま身の回りにいる人や使えるツールだけでも、相談体制は組み立てられます。まずは「自分が決断する」と「考える過程は分担できる」を分けて考えるところから始められます。

相談の目的は「答えをもらうこと」なのか?

答えが欲しい場面はありますが、相談の本来の目的は思考整理と、決断するための材料集めにあります。答えが返ってこなくても、頭の中が整理できれば相談は機能しています。

代表・原本は、相談の目的についてこう語っています。

「結局ですね、相談するっていうのは、なんか答えが欲しいっていうケースももちろんあるんですけれども、頭の中を整理できればいいのかな、思考整理ができればある程度いいのかなというふうにも思います。」(代表・原本)

「決断するための材料ですね、集めるっていうような、それが相談の本来の目的だと思っています。」(代表・原本)

この定義にすると、相談相手に求める条件が現実的になります。業界の正解を知っている人でなくても、質問をして論点を並べ直してくれる相手なら役に立つということです。逆に、答えだけを求めて相談すると、相手の意見と自分の判断が混ざり、決めたあとに納得感が残りにくくなります。

思考整理の手段としては、マインドマップやロジックツリーといった手法も使えます。人に話す前に自分で論点を書き出しておくと、相談の時間を「材料集め」に集中して使えます。

小さな会議スペースで二人の日本人が資料を広げて話し合う様子

相談相手は誰を選べばいい?相手ごとの向き不向きは?

相手ごとに向いているテーマが違います。気持ちを吐き出すのは家族や経営者同士、数字は社外CFOや税理士・会計士、金融機関、判断の壁打ちはコーチ・コンサルやAIというように、テーマで分けるのが現実的です。

代表・原本が挙げた相談先を、テーマ別に整理すると次のようになります。

相談相手向いているテーマ押さえておきたい点
家族気持ちの吐き出し経営状態が厳しい時は話しづらく、内容が難解な場合は相談してもどうにもならないケースがある
経営者同士愚痴の共有、感覚の確認同じ立場どうしなので、愚痴を吐き出す側面の相談は話しやすい可能性がある
コーチ・コンサル思考整理、判断の壁打ち外部の相談相手でも本音を全部話せるかという問題は残るため、話す範囲を自分で決めて使う
社外CFO/税理士・会計士数字(財務)の相談数字ベースで現状と選択肢を見てもらえる
金融機関(銀行)資金・数字面の相談貸す以上は返してほしい立場であり、数字のプロフェッショナルでもある

この表の使い方はシンプルです。いま頭を占めている悩みがどの行に当たるかを先に決め、その行の相手に話す。テーマと相手が合っていれば、一回の相談で得られる材料の量が変わります。

なお、税理士・会計士や公的な経営相談窓口の制度・運用は変わることがあります(2026年9月時点)。利用を検討するときは、最新の公式情報で確認してください。

AIとの壁打ちは相談相手になるのか?

思考整理のための壁打ち相手としては使えます。相手の時間を気にせず、何度でも論点を並べ直せるのが利点です。最近は音声でAIとやり取りできるものも増えています。

代表・原本は「最近特に音声でAIとやり取りできるもの増えました」と話しています。文字を打つ手間が減ると、頭の中にあるものをそのまま口に出して整理する使い方がしやすくなります。

相談の目的を「思考整理と決断材料集め」と置くなら、AIとの壁打ちはその目的にかなり近い位置にあります。具体的には、こうした使い方ができます。

  • 悩みを口に出して言語化し、論点を書き出してもらう
  • 選択肢をマインドマップやロジックツリーの形に整理し直す
  • 自分が見落としている前提や、反対側の見方を挙げてもらう

一方で、自社の事情を踏まえた判断や、数字の責任を伴う話は人に相談する領域が残ります。AIで論点を整理してから、人に相談する時間を判断そのものに使う。この順番にすると、限られた相談の機会を濃く使えます。まずは今日の悩みを一つ、声に出して整理するところから試せます。

愚痴を吐き出す場と、数字を詰める場は分けたほうがいい?

分けたほうが機能します。気持ちの整理と数字の判断は、求めるものも適した相手も違うためです。両方を一人に求めると、どちらも中途半端になりやすくなります。

代表・原本は、愚痴を吐き出すという側面の相談は家族や経営者同士が話しやすい可能性がある一方で、数字(財務)に関する相談は社外CFOや税理士・会計士、金融機関が適している、という整理をしています。

金融機関については、こう語っています。

「銀行側ってお金を貸す以上当然返してほしいわけですし、数字のプロフェッショナルでもあるんですよね。」(代表・原本)

貸し手は返済を前提に数字を見るため、自社の計画のどこが弱いかを数字の目で見てもらえる相手になり得るという見方です。

場を分けるときの考え方を整理すると、次のようになります。

  • 気持ちの場:答えを求めず、状態を言葉にして軽くすることが目的
  • 数字の場:根拠のある材料を増やし、選択肢を絞り込むことが目的
  • 判断の場:集めた材料を並べ、自分がどれを選ぶかを決めることが目的

この3つを同じ相手・同じ時間で混ぜないだけで、相談のたびに前に進む感覚が出てきます。自分の手帳に「この悩みはどの場に置くか」を書き分けるところから始められます。

創業期に自分の相談体制をどう整えるか?

相手を探す前に、悩みを「気持ち」「数字」「判断」に仕分けるのが先です。そのうえで各テーマに一つずつ置き場所を決め、相談する頻度を先に決めておくと、孤独を感じたときに動ける状態になります。

創業期にできる整え方を、手順として並べます。

  1. いま抱えている悩みを書き出し、「気持ち」「数字」「判断」の3つに仕分ける
  2. 気持ちの置き場所を決める(家族、経営者同士など話しやすい相手)
  3. 数字の相談先を決める(社外CFO、税理士・会計士、取引のある金融機関)
  4. 判断の壁打ち相手を決める(AIとの壁打ち、コーチ・コンサル、顧問)
  5. 相談の前に、マインドマップやロジックツリーで論点を自分で書き出す
  6. 相談する頻度を先に決めておく(例:月1回など、迷う前に話す場として固定する)

ポイントは6番です。困ってから相手を探すと、いちばん孤独が重い時期に動けません。頻度を先に決めておけば、「次に話す場がある」という前提で日々の判断ができます。

ノルツの起業支援は、月額3万円〜の顧問型で毎月伴走する形をとっています。MVVの策定、事業計画、資金調達、マーケティング、AI活用まで一つの窓口で、毎月一緒に考えながら論点を並べ、決断の材料を揃えていく進め方です。最終的に決めるのは経営者自身である、という前提は変わりません。その手前の思考整理と材料集めを分担する相手として使っていただけます。

まずは今の悩みを3つに仕分けて、埋まっていない枠を確認してみてください。判断の壁打ち相手が空いている場合は、LINEまたはお問い合わせフォームから相談内容をそのまま送っていただければ、現状の整理からご一緒します。

よくある質問

創業期で相談相手がいないのは珍しいことですか?

珍しくありません。会社の経営状態やクライアントの話は従業員に共有しづらく、創業期は社内に同じ目線で数字を見ている人がいないため、相談相手がいないと感じやすい状況になります。立場からくる構造的なもので、個人の性格の問題ではありません。

本音を全部話せる相談相手はどう探せばいいですか?

一人に全部を求めると難しくなります。ノルツ株式会社代表・原本は「本当に心の中全部打ち明けられるような相手がいたら、そりゃあ素晴らしいことなんですけれども、なかなかそれは難しいんじゃないかなと思います」と語っています。気持ち・数字・判断でテーマを分け、それぞれに話せる相手を持つほうが現実的です。

相談しても答えが返ってこないときは意味がないのでしょうか?

相談の目的を「思考整理と決断材料集め」と置くと、答えが返ってこなくても機能しています。論点が並び直り、選択肢が整理できていれば、そのぶん決断に近づいています。最終的にどちらへ進むかは経営者自身が決めることになります。

数字の相談は誰にするのがいいですか?

数字(財務)の相談先としては、社外CFO、税理士・会計士、金融機関が挙げられます。金融機関は貸す以上は返してほしい立場であり、数字のプロフェッショナルでもあるため、計画を数字の目で見てもらう相手になり得ます。相談窓口や制度の運用は変わることがあるため、2026年9月時点の情報として、最新の公式情報で確認してください。

AIとの壁打ちと人への相談はどう使い分ければいいですか?

AIは論点の書き出しや選択肢の整理といった思考整理に向いており、最近は音声でやり取りできるものも増えています。自社の事情を踏まえた判断や数字の責任を伴う話は人に相談する領域が残るため、AIで論点を整理してから人に相談する順番にすると、相談の時間を判断そのものに使えます。

参考・出典

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