この記事の要点
起業後に騙してくる人を100%見抜く方法はありません。その前提に立ったうえで使える見分け方が、①話は必ずファクト・数字で確認する(仮説の数字か契約上の数字かを見る)、②自分の話ばかりで他者への感謝がない人に注意する、③補助金・融資・投資などお金が直接絡む儲け話では警戒心を最大にする、という3つの判断軸です。
起業すると、それまで会社員時代には縁のなかったタイプの人と出会うようになります。その中には、正直に言って「騙してくるような人」もいます。私自身、この見分け方が完璧に分かっているわけではありません。むしろ、これからも騙されることがあるんじゃないかと、今でも思っています。それでも、何度か痛い思いをする中で「多少は分かるようになった見分け方」があります。完璧な防御策ではなく、あくまで自分が実際に使っている判断軸として、ここでは3つお伝えします。
騙してくる人を100%見抜くことはできるのか?—できない前提に立つ
最初にお伝えしておきたいのは、「騙してくる人を100%見抜く方法はない」ということです。これは諦めではなく、むしろ大事な出発点だと思っています。「自分は騙されない」と思い込んでいる人ほど、いざというときに無防備になります。口がうまい人は、こちらの「見抜けるはず」という自信を逆手に取ってきます。だからまず、「自分も騙されうる」という前提に立つ。その上で、確率を下げるための軸を持っておく——この順番が現実的です。
完璧を目指さないからこそ、シンプルな判断軸が効きます。私が意識しているのは、難しい心理術ではなく、誰でもチェックできる3つのポイントです。
判断軸①:なぜ必ずファクト・数字で見るのか?
いちばん重要なのが、これです。話を聞くときは、必ずファクトベースで——つまり数字で見るようにしています。口がうまく、早口で畳みかけてくる人ほど、雰囲気で押し切ろうとします。けれど、その話を一度数字に落としてみると、ぼやけていた部分がくっきり見えてくることがあります。
特に注意して読むのが、提示される資料の数字が「仮説の数字」なのか「契約上の数字」なのか、という違いです。「このくらいは見込めます」という仮説の数字を、さも確定した話のように見せてくるケースは少なくありません。細かいところまで読み込んで、その数字の根拠は何か、どこまでが約束されたものなのかを確認する。これだけで、勢いに飲まれて判断するリスクはかなり下げられます。
「数字」は資料の中だけにあるのではない
相手がこちらにどれだけ本気かも、実は数字で見えます。お金を払ってくれたか、何回会ってくれたか、どれだけ時間を使ってくれたか——こうした行動の積み重ねも立派なファクトです。言葉の熱量ではなく、相手が実際に割いてきたコストを数字として見ると、関係の実像がつかめます。
判断軸②:なぜ「自分の話ばかりする人」に注意すべきなのか?
2つ目は、もう少し感覚的な軸です。「自分のことばかり喋る人」には気をつける、というものです。もちろん、自分の話が多い人がみんな悪い人だ、という話ではありません。100%ではない。ただ、私の経験では、自分のことばかり話す人には、騙そうとしてくる人が一定の割合で混じっています。
なぜ自分の話の多さが手がかりになるのか。私はこれを「他人への感謝がないかどうか」のサインだと捉えています。本当に信頼できる人は、これまで自分を助けてくれた人や、関わってきた相手への感謝が自然と言葉ににじみます。逆に、自分の実績や自分の儲けの話ばかりで、周りへの感謝がまったく出てこない人は、相手を「自分が得をするための対象」としてしか見ていない可能性がある。会話の中で、相手がどれだけ他者に意識を向けているか。そこにそっと注目してみると、見えてくるものがあります。
判断軸③:お金が直接絡む儲け話では、なぜ警戒心を最大にするのか?
3つ目は、テーマで線を引く軸です。お金が直接絡む話のときは、警戒心を意識的にマックスまで上げる。具体的には、補助金、助成金、融資、投資——この辺りの「儲け話」です。これらは、騙す人にとってやりやすい領域でもあります。「お金が増える」「もらえる」という期待が、こちらの判断を鈍らせるからです。
私自身、補助金まわりでは苦い経験があります。「事業計画は丸投げでOK」といった誘い文句がいかに危ういかは、別の記事でも書きました。お金が絡む話ほど、①の「数字で見る」を厳しく適用してください。誰がどれだけ得をする仕組みなのか、手数料や成功報酬はいくらか、最後まで責任を持つのは誰か。儲け話のときこそ、感情を一段下げて、冷静に数字とファクトを確認する。それが、いちばん効く防御策です。
3つの判断軸を、どう使うか?
整理すると、私が使っている見分け方はこうです。まず「自分も騙されうる」と認めた上で、①話は必ず数字・ファクトで確認する、②自分の話ばかりで他者への感謝がない人に注意する、③お金が絡む儲け話では警戒心を最大にする。どれも特別なスキルは要りません。むしろ、当たり前のことを、勢いや期待に流されずに毎回やれるかどうかが分かれ目です。
そして、これらは「人を疑うため」の軸ではありません。本当に信頼できる相手かどうかを、雰囲気ではなく事実で確かめるための軸です。きちんとした相手であれば、数字を尋ねても誠実に答えてくれますし、こちらへの感謝も自然と伝わってきます。見極めの軸を持っておくことは、良い相手と安心して付き合うための土台でもあるのです。
補助金・融資・投資では、それぞれ何を警戒すべきか?
③の「お金が絡む業種は警戒する」を、もう少し具体的に補足します。同じ「お金の話」でも、種類によって気をつける場所が違うからです。まず補助金や助成金は、「もらえるお金」という響きが強く、つい飛びつきたくなります。けれど、申請から実績報告までの手間や、間に入る業者の手数料を数字に落とすと、自分の手元に本当に残るものは思ったより小さいことがあります。「もらえる額」ではなく「最終的に自分に残る額と、そのために使う時間」で見るのが鉄則です。
融資や投資は、相手の見せる数字が「仮説」なのか「約束」なのかが特に曖昧になりがちな領域です。「これだけ増える見込みです」という話の、見込みの根拠を必ず確認してください。誰が、どういう前提で立てた数字なのか。うまくいかなかったときに誰が責任を負うのか。そこが説明できない相手の儲け話には、警戒心を最大にして臨むべきです。どの種類でも共通するのは、結局①の「数字で見る」に立ち返ること。お金の話ほど、感情ではなくファクトで判断する姿勢が効きます。
「この話、乗っていいのか」を一緒に確認します
創業期は、判断材料が足りないまま大きな話を持ちかけられる場面があります。ノルツの起業支援では、儲け話や契約の数字を一緒に読み解き、冷静に判断するお手伝いをします。迷ったときは、一人で抱えずまずご相談ください。
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