他人のアドバイスの正しい受け取り方

そのまま実行せず、自分の頭で噛み砕く

この記事は、ノルツ株式会社代表・原本が、独立してから数多くのアドバイスを受け取る中で見つけた「受け取り方の基準」をもとに書いています。助言をどう扱えばいいのか迷っている創業期の方へ、自分の頭で考えて取捨選択するという姿勢をお伝えします。

この記事の要点

他人のアドバイスは、まず聞く耳を持って受け取り、そのまま実行せず自分の頭で噛み砕き、腑に落ちたものだけ実行するのが正しい受け取り方です。噛み砕いた結果「受け入れない」と判断するのもアリ。大事なのは、受け入れるかどうかの判断を他人ではなく自分の頭で行うこと。聞く耳と取捨選択の両立が、独立後の成長を支えます。

独立して経営者になると、ありがたいことに、いろいろな人がアドバイスをくれます。先輩経営者、専門家、交流会で出会った人、ときには家族や友人まで。けれど、そのアドバイスをどう受け取るかで、その後の伸び方は大きく変わります。私自身、独立してからこの「受け取り方」にずいぶん悩みました。全部を素直に聞こうとして混乱した時期もあれば、逆に頑固になりすぎた時期もありました。たどり着いたのは、「自分の頭で噛み砕いて取捨選択する」という、当たり前のようでいて実践が難しい姿勢です。この記事では、私の体験をもとに、アドバイスとの向き合い方を整理します。

窓辺で考えごとをする日本人男性経営者の後ろ姿

なぜ聞く耳を持たない経営者は続かないのか?

まず大前提として、人の話をまったく聞かない経営者は、長くは続きません。これは私が見てきた範囲でも、はっきりそう感じます。聞く耳を持たない感じの経営者というのは、正直なところ無理がある。なぜなら、独立すると自分の視点だけで物事を判断しがちになり、思い込みや偏りに気づけなくなるからです。外からの指摘は、自分では見えない死角を教えてくれる貴重なものです。

学ぶ姿勢を持ち続けること、成長しようとし続けること。これは独立起業した人にとって、特別なことではなく「最低限」だと私は思っています。だから、アドバイスをくれる人を煙たがったり、最初から拒絶したりするのは、もったいない。まずは聞く。これがスタート地点です。

アドバイスは全部そのまま実行すべきか?

一方で、ここからが本題です。「聞く耳を持つ」ことと「言われた通りにそのまま実行する」ことは、まったくの別物です。私の正直な実感を言えば、他人からアドバイスされて、それをそのまま実行してうまくいったことは、今のところ一度もありません。これは誇張ではなく、振り返ってみての本音です。

なぜそうなるのか。アドバイスは、その人の経験・立場・前提のもとで生まれたものだからです。相手にとっては正解でも、自分の事業・状況・強みにそのまま当てはまるとは限らない。むしろ、当てはまらないことのほうが多い。だからこそ、受け取ったアドバイスを「そのまま」載せ替えても、たいていうまく回らないのです。

アドバイスの正しい受け取り方とは?—自分で噛み砕き、腑に落ちて初めて実行する

では、どう受け取るのか。私のやり方はシンプルです。言われた内容を、いったん自分のなかに持ち帰る。そして自分の頭で考えて噛み砕き、「なるほど、これは自分の場合こういう意味だ」と腑に落ちて、初めて実行に移す。腑に落ちないうちは、動かさない。

この「噛み砕く」というプロセスがとても大事です。アドバイスをそのまま飲み込むのではなく、自分の状況に翻訳し、必要なら形を変えて取り入れる。そうやって初めて、他人の言葉が「自分のもの」になります。受け取ったまま実行するのと、噛み砕いてから実行するのとでは、同じ行動でも結果がまるで違ってきます。

アドバイスの受け取り方・3ステップ

1. まず聞く(聞く耳を持たない経営者は続かない)
2. そのまま実行せず、自分の頭で噛み砕く(自分の状況に翻訳する)
3. 腑に落ちたものだけ実行し、腑に落ちないものは「受け入れない」と判断する

アドバイスを「受け入れない」という選択肢はアリか?

噛み砕いた結果、「これは自分には合わない」と思うこともあります。そのときは、受け入れないという選択をしていい。私は、このアドバイスは受け入れない、という選択肢も全然アリだと考えています。大事なのは、受け入れる/受け入れないという判断そのものを、他人ではなく自分の頭で行うことです。

誤解してほしくないのは、これは「気に入らないアドバイスを無視していい」という話ではないということです。ちゃんと聞いて、ちゃんと噛み砕いて、そのうえで自分の責任で選ぶ。受け入れるにせよ断るにせよ、判断の主体が自分であること。ここが、独立した経営者の基本姿勢だと思います。

テーブルでアドバイスを受けながら話し合う二人の日本人ビジネスパーソン

なぜ独立後は「自分の頭で考える」ことが核心なのか?

そもそも、なぜ「自分の頭で考える」ことにここまでこだわるのか。それは、人の指示に従って仕事をしているだけなら、独立した意味があまりないからです。会社員であれば、上司や組織の方針に沿って動くことにも意味があります。けれど独立した以上、何を選び、何を捨てるかを自分で決められることこそが、その立場の核心です。

アドバイスを全部そのまま実行するというのは、結局、判断を他人に預けているのと同じです。それでは、せっかく独立しても「指示に従う」構造から抜け出せていない。だからこそ、もらった助言を自分の頭で噛み砕き、自分で選ぶ。この一手間が、独立した人の成長を支える土台になります。

聞く耳と取捨選択は、どう両立させるか?

ここまでをまとめると、目指したいのは「聞く耳」と「取捨選択」の両立です。どちらか一方に偏ると、うまくいきません。聞く耳だけだと、言われるままに振り回されて軸を失う。取捨選択だけだと、独りよがりになって死角に気づけない。両方を同時に持つことが、難しいけれど大切なのです。

具体的には、こう考えてみてください。アドバイスをもらったら、まず「ありがとうございます」と素直に受け取る。その場で反論したり、逆に鵜呑みにしたりしない。持ち帰って、自分の状況に当てはめて考える。腑に落ちれば取り入れ、落ちなければ丁寧に見送る。この習慣を続けるうちに、自分にとって本当に必要な助言を選び取る感覚が育っていきます。自分の頭で考える力は、独立後にこそ伸ばせる力です。その姿勢の出発点として、まずは目の前のミッションや事業の軸を言語化しておくと、アドバイスの取捨選択もぶれにくくなります。これについては一人起業のミッションの作り方でも触れています。

なぜ「噛み砕く」だけで、結果が変わるのか

同じアドバイスを受け取っても、そのまま実行する人と、いったん噛み砕いてから動く人とでは、結果が大きく分かれます。私自身、振り返ってみて、人から言われたことをそのまま実行してうまくいった経験は、今のところ一度もありません。これは相手のアドバイスが間違っていたという話ではなく、「自分の状況に翻訳する」という一手間を飛ばしていたからだと思っています。アドバイスはあくまで相手の経験から生まれた一般解であり、自分の事業という個別解に当てはめ直さなければ、うまく機能しないのです。

噛み砕くというのは、具体的には「この助言は、自分の場合だと何を意味するのか」を自分の言葉で言い直してみる作業です。言い直せないうちは、まだ腑に落ちていない証拠なので動かさない。逆に、自分の言葉で説明できるようになったら、それはもう借り物ではなく、自分の判断になっています。学ぶ姿勢を持ち続けることは独立した経営者にとって最低限のことですが、その学びを成長に変えるのは、聞いた量ではなく、噛み砕いて自分のものにできた量なのだと感じています。

もう一つ意識しているのは、噛み砕く時間を意図的に取ることです。アドバイスをもらったその場は、相手の熱量や説得力に引っ張られて、つい「やってみます」と即答してしまいがちです。けれど、その場の納得と、自分の頭で考え抜いた納得は別物です。だからこそ、ありがたく受け取ったうえで一度持ち帰り、冷静なときに自分の事業の文脈で検討する。受け入れるにせよ見送るにせよ、判断の主体が自分であり続けるために、この「持ち帰って考える」という間隔が効いてきます。

とくにアドバイスが複数あって、しかも互いに食い違うときほど、この姿勢が効きます。独立すると、ある人は「もっと広げろ」と言い、別の人は「絞れ」と言う。どちらも、その人の経験のなかでは正しい。だからこそ、すべてをそのまま足し合わせようとすると、矛盾して動けなくなります。一つひとつを自分の状況で噛み砕き、いまの自分に必要なものだけを選び取る。そうやって取捨選択することは、わがままでも不勉強でもなく、むしろ多くの助言を活かすための、いちばん誠実なやり方だと思っています。

「このアドバイス、受け取るべき?」を一緒に整理します

たくさんの助言をもらうほど、何を採り入れて何を見送るか、一人では判断しづらくなります。ノルツの起業支援では、あなたの事業の軸に照らして、アドバイスの取捨選択を一緒に整理します。自分の頭で考える伴走相手として、まずは気軽にご相談ください。

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