AIに「完璧です」と言われた新規事業が、人に聞いたら全否定された話

AIの新規事業アドバイスを、どこまで信じていいのか

この記事は、ノルツ株式会社代表・原本が、AIと壁打ちを重ねて固めた新規事業案を実際に世に出す直前で立ち止まり、人に聞いて全否定された自身の体験をもとに書いています。AIの評価をどこまで信じていいのか、なぜAIは「完璧」と言った直後に手のひらを返すのか、そこから学んだ「失敗する理由を聞く」という使い方までを、具体的にお伝えします。

この記事の要点

AIとの壁打ちだけで新規事業を決めるのは危険です。AIは入力した人が望むアウトプットを返す仕組みのため、「完璧です」と評価しても、あなたが反論を入力した瞬間に同意側へ転じます。つまりAIの肯定は「あなたが肯定してほしそうだから肯定している」可能性を常に含みます。私(ノルツ株式会社代表・原本)は、AIに完璧と言われた新規事業を、実際に動く直前で経営コンサルやマーケの知人に見せ、全員から「僕だったらやらない」と言われました。対策はシンプルで、AIには「うまくいく理由」ではなく「失敗する理由」を聞くこと。そして最後は必ず人に見せることです。

「AIと壁打ちすれば、一人でも良い新規事業が作れるのではないか」。一人社長として本気でそう考え、私(ノルツ株式会社代表・原本)は実際にAIとひたすら対話を重ねて新規事業案を固めました。そしてAIから「もうこの事業内容は完璧です、あとは動くだけです」とまで言われました。ところが、動く直前に人へ見せたら、全員に否定されました。この記事は、そのときに起きたことと、そこから私が変えたAIの使い方を、包み隠さずお話しするものです。同じようにAIで事業アイデアを詰めている一人社長の方に、先に読んでおいてほしい失敗談です。

深夜のデスクでノートPCに向かい、AIと新規事業の壁打ちを一人で重ねる日本人の起業家

AIが「完璧」と言った新規事業は、なぜそのまま信じてはいけないのか?

結論から言うと、AIの「完璧」は事業の成功を保証するものではないからです。AIは、入力した人が望んでいるアウトプットを返すことを仕事にしています。事業案を前向きに詰めていく壁打ちを続ければ、AIはその流れに沿って前向きな評価を返しやすくなります。「完璧です」は客観的な太鼓判ではなく、それまでの対話の延長線上に出てきた相づちに近いことがあるのです。

私自身、この落とし穴に正面からはまりました。AI時代に生き抜ける新規事業を作らなければという焦りから、AIと何度も壁打ちを重ね、案がまとまったところで「完璧です、あとは動くだけです」という評価を得ました。その言葉を信じかけて、実行の一歩手前まで進んでいたのです。危なかったのは、AIが嘘をついたからではありません。AIは頼まれた通り「この案を良くする」方向で誠実に応えていただけで、私がその評価を「第三者の客観的な合格判定」だと勘違いしていたことが問題でした。

AIに「あとは動くだけ」と言われた新規事業とは、どんな案だったのか?

私が壁打ちで固めたのは、一言でいえば「気づきがない人に、気づきを売るビジネス」でした。本業のウェブサイト制作も、企業支援での対話業務も、AIの能力向上でいずれ飲み込まれる業務だと感じ、AI時代でも残る新規事業を作ろうとした結果、たどり着いた案です。AIとの壁打ちの中では筋の通ったモデルに見え、AIからも高い評価が返ってきました。

「AIからも、もうこの事業内容完璧です、あとは動くだけです、ぐらいまで言われていたんです」(ノルツ株式会社代表・原本)

ここまで言われれば、普通は動き出します。私も動く準備に入りました。ただ、心のどこかに小さな引っかかりが残っていました。今思えば、その違和感こそが唯一の救いでした。AIの評価が完璧すぎて、逆に「本当にそうか」と確かめたくなったのです。

知人に意見を聞いたら、なぜ全員「僕だったらやらない」だったのか?

動く直前、私はこの事業案を、経営コンサルやマーケティングに詳しい、頭がいいと思う知人数名に見せて意見を求めました。結果は、表現こそ人それぞれでしたが、指し示す方向はだいたい同じでした。全員が「僕だったらやらない」だったのです。

「それに対しての意見は、もうみんな揃って、僕だったらやらないっていう、そういう意見だったんです」(ノルツ株式会社代表・原本)

なぜ人に聞くと結果が逆になったのか。理由は、人はこちらが望んでいる答えに引きずられないからです。とくに経営やマーケの経験がある人は、こちらの熱意とは別に、市場・コスト・自分の常識に照らして「自分だったらやるか」で判断します。AIが対話の流れに沿って前向きに応じたのに対し、知人たちは私の熱量から独立した外部の視点を持っていた。この「独立した視点かどうか」が、AIと人の評価を分けた決定的な差でした。

AIに「こう言われたけど、どう?」と反論をぶつけると、何が返ってくるのか?

知人の意見を持ち帰った私は、AIに「こういうこと言われたんだけど、どう?」と聞き返しました。すると、あれだけ「完璧」と言っていたAIから、こう返ってきました。

「それは素晴らしい指摘ですね。その通りです」(AIの返答/ノルツ株式会社代表・原本)

手のひらを返された、というのが正直な感覚でした。AIに怒ってもしょうがないと分かってはいても、「お前、完璧って言ったよね」と思ってしまうほどの衝撃でした。ここで私は、AIの評価の性質を身をもって理解しました。肯定的な入力には肯定で、否定的な入力には同意で応じる。AIは対話の相手として非常に優秀ですが、その優秀さは「あなたの入力に最適に応える」方向に働きます。だからこそ、肯定だけを切り取って信じるのは危険なのです。

頭上に浮かぶ疑問符と電球、AIの評価を鵜呑みにせず自分で考え直すことをイメージした抽象イメージ

なぜAIは「完璧」と言った直後に、あっさり同意へ転じるのか?

能力が低いからではありません。AIという仕組みの性質そのものが理由です。AIは、インプットに対して、インプットした人が望んでいるアウトプットを出すのが仕事だからです。前向きに詰める入力には前向きな評価を、反論の入力にはその反論への同意を返す。どちらもAIから見れば「入力者が望むアウトプット」を誠実に返しているだけで、AIの中では矛盾していません。

この性質を踏まえると、AIとの壁打ちには「向く使い方」と「向かない使い方」がはっきり分かれます。整理すると次の通りです。

使い方AIの適性理由
案を構造化・言語化する向く望むアウトプットを的確に生成できる
抜けや検討漏れを洗い出す向く(聞き方次第)「リスクを挙げて」と頼めば列挙してくれる
案の良し悪しを客観判定する向かない入力者が望む評価に引きずられる
やるべきかどうかの最終ジャッジ向かない独立した外部視点を持てない

つまりAIは、答えを作る・整えることは得意でも、その答えに合格・不合格の判定を下す審判役には向いていません。審判はこちらの望みから独立している必要があり、AIはその独立性を構造的に持てないのです。

一人社長がAIで新規事業を検討するとき、何を間違えていたのか?

もう一つ、私には規模感の根本的な誤りがありました。私が選んでいた「気づきがない人に気づきを売る」ビジネスは、AIによれば、認知レベルが無自覚の人を今すぐ客のレベルまで引き上げる必要があり、そのマーケティング費用だけで数百億、もしかしたら数千億かかるかもしれない、というものでした。一人社長が扱う規模を、完全に超えていたのです。

ここで効いたのも、皮肉にも人の視点でした。AIとの壁打ちの中では、モデルの筋の良さばかりを詰めていて、「自分の規模で本当に回せるのか」という問いが立っていませんでした。一人社長にとって重要なのは、案が理論上優れているかではなく、自分のリソースで実行し、生活を成り立たせられるかです。市場の認知そのものを変えにいくような大きすぎる事業は、たとえ理屈が通っていても、一人でやる事業としては選んではいけなかった。これが、私が犯していた最大の間違いでした。

AIとの壁打ちを「失敗する理由を聞く」に変えると、何が変わるのか?

この失敗以降、私はAIへの聞き方を根本から変えました。「うまくいく理由」を聞くのをやめ、「失敗する理由」を逆に聞くようにしたのです。

「この事業のリスクを洗い出して、失敗する理由を教えて、みたいな感じでAIに聞くようにしました」(ノルツ株式会社代表・原本)

聞き方を変えると、AIの性質が逆に味方になります。AIは入力者が望むアウトプットを返すので、「失敗する理由を挙げて」と頼めば、遠慮なくリスクを列挙してくれます。前向きな評価がほしいと入力すれば前向きな評価が返ってくるのと同じ理屈で、今度はリスクの洗い出しに全力を出してくれるのです。実際の手順は次のようにしています。

  1. 案がまとまったら、まず「この事業が失敗する理由を洗い出して」と聞く。うまくいく理由ではなく、失敗する理由から先に集める。
  2. 挙がった失敗理由が、自分にとって許容範囲かを見る。改善や回避ができる範囲の理由ばかりなら、その事業には可能性があると判断する。
  3. 致命的で回避できない理由が混じっていないか確認する。一人社長の規模で潰せないリスク(例:数百億規模のマーケ費用)が出たら、案そのものを見直す。
  4. 最後は必ず人に見せる。AIの評価だけで動かず、こちらの望みから独立した第三者に「自分だったらやるか」を聞く。

大量に挙がる失敗理由が、自分にとって許容範囲内で、改善や回避が可能な範囲に収まっているか。これを新規事業に進む・進まないの判断基準にしています。失敗理由を先に潰しておけば、少なくとも「完璧」という言葉に浮かれて突っ込む事故は防げます。

結局、AIの新規事業アドバイスはどう使えばいいのか?

答えは、AIを「壁打ち相手」としては最大限使い、「合格判定を出す審判」としては使わない、です。一人社長にとってAIは、深夜でも壁打ちに付き合ってくれる貴重な相手で、案を構造化したりリスクを洗い出したりする作業では圧倒的に頼りになります。私がこの失敗を「良い経験だった」と思えているのも、AIを手放したからではなく、使いどころを整理できたからです。

やってはいけないのは、AIの肯定的な評価を、そのまま第三者の合格判定として受け取ることです。「完璧です」はゴールの合図ではなく、そこから「では、この案が失敗するとしたら理由は何か」を聞き始める合図だと考えてください。そして最後は、必ず自分の望みから独立した人に見せる。AIで作り、AIで壊しにかかり、人で確かめる。この三段構えが、一人でも事故らずに新規事業を検討するための、私なりの結論です。

新規事業の壁打ち相手が、AIしかいないと感じている方へ

一人社長にとって、事業案を独立した視点でぶつけられる相手は貴重です。ノルツの起業支援では、AIをどう業務や事業検討に組み込むかも含め、事業の方向性・ミッションの言語化から、その案を自分の規模で本当に回せるのかまで、実際に一人社長として運用している立場で伴走します。まずは気軽にご相談ください。

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