この記事の要点
提供メニューを1つに絞ると、そのメニューを「今すぐ欲しい」人にしか商談が成立せず、受注がタイミング待ちになります。ノルツ株式会社代表・原本は独立当初ホームページ制作だけを掲げ、「私が受注したものはすべてタイミングが良かったものに限られます」。実際にはチラシ・名刺・動画編集・広告とLP・SNS運用代行まで提供できました。対策は、できることを棚卸しし、相手の課題を先に聞く順番に変えることです。
「サービスは絞ったほうが売れる」——起業やフリーランスの世界では、よく言われる定石です。たしかに何屋か分からない状態はよくありません。しかし、絞り方を間違えると、受注機会そのものが激減します。この記事では、ノルツ株式会社代表・原本が独立当初にホームページ制作という単一メニューだけを掲げていた時期の実体験をもとに、提供メニューを絞りすぎると何が起きるのか、そしてできることの棚卸しでどう商談を増やせるのかをお伝えします。
提供メニューを1つに絞ると、なぜ受注機会を逃すのか?
提供メニューを1つに絞ると、商談が成立する相手が「そのメニューを今すぐ欲しい人」だけに限定されます。相手が抱えている課題がそのメニューと一致していなければ、話は前に進みません。つまり、受注できるかどうかが自分の力ではなく、相手側のタイミングで決まってしまうのです。
ノルツ株式会社代表・原本は独立当初、ホームページ制作を売っていました。提示の仕方も「ホームページを作っています」というシンプルなものでした。その結果を、本人はこう総括しています。「私が受注したものはすべてタイミングが良かったものに限られます」。売れたのは「本当に今ホームページが欲しいんです」という人だけだった、というのが実態です。
ここで押さえておきたいのは、これは営業スキルの問題ではないということです。原本自身「私実は営業は全然得意ではありません」と認めていますが、仮に営業がうまくなっても、単一メニューを掲げている限り「今それが欲しい人」を探す作業自体は変わりません。母集団が小さいまま、確率だけを上げようとすることになります。
ホームページ制作という単一メニューが、なぜ特に売れにくかったのか?
ホームページ制作は、単一メニューとして掲げるには相性が悪い商材でした。理由は3つあります。すでに持っている人が多いこと、持っていない人は必要性を感じていないこと、そして価格が高く発注の想定がないことです。
代表・原本の観察はこうです。「ホームページって起業してある程度経つとみんな持っているものですし、逆に持っていない方は必要性を感じていないというケースの方が多かったり」。つまり市場が、すでに満たされている層と、そもそも欲しくない層に二分されていた状態です。さらに価格の問題もあります。値段が高いために「発注することが想定されていない・発注しようという頭がない」人のほうが多いのではないか、という見立てです。
この構造を整理すると、単一メニューを掲げたときに商談が成立する相手は、次の狭い一枠しか残りません。
| 相手の状態 | 単一メニュー(ホームページ制作)を掲げたときの結果 |
|---|---|
| すでに持っている | 商談にならない(作り直しの必要性が出るまで待つことになる) |
| 持っていないが必要性を感じていない | 商談にならない(そもそも検討の対象外) |
| 価格が高いと思っている・発注の想定がない | 商談にならない(予算の枠を作る発想自体がない) |
| 今すぐ欲しい | 受注できる(=タイミングが合った人だけ) |
表の最後の一枠だけが受注につながる、という構造です。だからこそ「すべてタイミングが良かったものに限られる」という結果になりました。単一メニューは、自分の側で商談の数をコントロールできない状態を作る、と言い換えられます。
当時、実際には何を提供できたのか?
掲げていたのはホームページ制作だけでしたが、実際に提供できる範囲はもっと広かった、というのが振り返ってのいちばん大きな反省点です。代表・原本の言葉では「自分の能力でできることって別にホームページ制作だけじゃなかったんですね、もともと」。当時すでに手を動かせた範囲は、具体的に次のとおりです。
- チラシ・名刺・ポスター等のクリエイティブ制作:ホームページ制作でAdobe製品を使っていたため、紙媒体のデザインも同じ道具で対応できた。
- 動画制作(編集のみ):撮影までは請けられないが、編集は可能だった。
- リスティング広告とLP:集客の入口づくりまでセットで扱えた。
- SNS運用代行:得意ではないが、提供自体はできた。
重要なのは、これらが「新しく身につけるべきスキル」ではなく、すでに持っていた道具の使い回しで成立していたという点です。原本の総括は「調べるのも含めて考えれば全然提供できた」というものでした。つまり、その場で完璧にできることだけを提供範囲とみなす必要はなく、調べながら対応できる範囲までを引き出しとして数えていい、ということです。
そして、提示していなかったものは相手には存在しません。名刺やチラシで困っている人が目の前にいても、「ホームページを作っています」としか言っていなければ、その相談は自分のところには来ません。提供できたはずの4領域の分だけ、拾えたかもしれない相談を逃していたのではないか——というのが、振り返っての見立てです。
できることの棚卸しは、どう進めればいいのか?
できることの棚卸しは、「実績があるもの」だけを並べる作業ではありません。手持ちの道具・経験・調べれば届く範囲まで含めて書き出すのがポイントです。次の4ステップで進めると整理しやすくなります。
- いま使っている道具から逆算する:ソフト・機材・アカウントなど、日常的に触れているものを列挙し、それぞれで「他に何が作れるか」を書き出す。代表・原本のケースでは、Adobe製品を使っていた事実からチラシ・名刺・ポスターが導かれます。
- 本業の前後工程を足す:自分の商材が使われる前後に必要になる作業を挙げる。ホームページなら、その前段の広告・LP、後段のSNS運用や更新が該当します。
- 「調べればできる」枠を分けて書く:今すぐできる/調べれば対応できる/請けられない、の3段階に分類する。2段目を捨てないことが、提示できる範囲を大きく変えます。
- 得意でないものも消さずに残す:原本はSNS運用代行を「得意ではない」と正直に認識していましたが、提供自体は可能でした。得意不得意は価格や進め方の調整で扱える問題であり、棚卸しの段階で削る必要はありません。
この棚卸しができると、相手の課題を聞いたときに「それならこれができます」と返せる確率が上がります。逆に棚卸しをしていないと、相手が困っていることを聞いても、自分の単一メニューに話を戻すしかなくなります。
ノルツの起業支援について
ノルツの起業支援では、「何を売るか」を一つに決め込む前に、いま自分が提供できることの棚卸しから一緒に取り組みます。代表・原本自身が単一メニューで商談が発生しない時期を経験しているため、机上の理屈ではなく実務の順番でお話しできます。提供メニューが絞りすぎか広げすぎか判断がつかない段階でも問題ありません。まずはお気軽にご相談ください。
メニューを増やすと「何屋か分からない」と言われないか?
メニューを増やすことと、看板をぼやかすことは別の作業です。混同しないための線引きは、「発信で名乗る肩書きは絞る/対面のヒアリングでは引き出しを全部使う」という使い分けにあります。棚卸しの目的は看板を増やすことではなく、目の前の相手の課題に応答できる幅を持つことです。
実際、代表・原本が反省しているのは、「ホームページを作っています」という提示だけで会話を終わらせていたことです。本来やるべきだったのは、こうでした。「本来は一人一人と話し、現在の状況をヒアリングし、どんな課題を持っているのか・何を成し遂げたいのかを聞くべきだった」。つまり、順番の問題です。メニューを先に出すのではなく、相手の状況を先に聞き、そこに合う引き出しを開ける。この順番なら、看板は絞ったままで商談の成立範囲を広げられます。
もう一つの実務的な線引きとして、広げるのは「同じ道具・同じ顧客層で成立するもの」に限る、という考え方があります。まったく別業種のメニューを足せば専門性は薄まりますが、クリエイティブや集客のように顧客が同じで工程が隣接している領域なら、幅は専門性を損ないません。
棚卸ししたメニューを、商談につなげるには何をすればいいのか?
棚卸しした引き出しを商談に変えるには、「小さく渡して、大きく任される」流れを作るのが有効です。代表・原本が振り返って「そういう営業の仕方の方が、今考えればよかった」と語っているのは、次の3ステップの動き方です。
- 相手の状況と課題を先に聞く:何を売るかを提示する前に、現在の状況・抱えている課題・何を成し遂げたいのかを聞く。ここで初めて、どの引き出しを開けるべきかが決まります。
- 小さいものはギブして紹介につなげる:原本の言葉では「名刺ぐらいだったらもう、じゃあ作りますよって言ってギブしちゃって、その方からの紹介を取りに行ったり」。単価の小さい成果物は入口として渡し、関係と紹介を取りに行く動き方です。
- 困ったときにワンセットで引き受ける:「展示会出展するんだけどクリエイティブ頼めないみたいな話になったら、そしたら空間全体ね、ワンセットで受ければいい」。個別発注では取りこぼす仕事も、丸ごと引き受けられる相手として認識されていれば、まとまった案件として入ってきます。
この3ステップが機能する前提が、棚卸しです。引き出しを把握していないと、名刺をギブする発想も、展示会まわりを丸ごと引き受ける発想も出てきません。逆に言えば、棚卸しは「メニュー表を増やすため」ではなく、「相談されたときに応えられる状態を作るため」の準備だと捉えると使いやすくなります。
提供メニューを絞りすぎているかは、何で判断できるのか?
判断の目安は、「受注できた案件を振り返ったとき、相手のタイミングで説明できてしまうかどうか」です。自分から提案して動いた案件がほとんどなく、「ちょうど探していた」「今まさに欲しかった」で説明できる案件ばかりなら、提示の幅が足りていない可能性が高いといえます。
代表・原本の場合、その振り返りが「私が受注したものはすべてタイミングが良かったものに限られます」という一文でした。受注が0だったわけではなく、売れてはいたのです。だからこそ気づきにくい。売れている以上、問題は営業スキルや商品の質にあると考えてしまいがちですが、実際に足りていなかったのは商談が成立する相手の母集団でした。
もし同じ状態にあるなら、次の受注が来るのを待つ前に、自分が提供できることの一覧を書き出してみてください。書き出した数が、掲げている数より多いのであれば、そこに逃していた商談があります。
まとめ:メニューを絞るより、できることを棚卸しして提示の幅を広げる
提供メニューを1つに絞ると、そのメニューを「今すぐ欲しい」人にしか商談が成立せず、受注はタイミング任せになります。ノルツ株式会社代表・原本が独立当初にホームページ制作だけを掲げていた時期、受注できたのは「本当に今ホームページが欲しいんです」という人だけで、本人の総括は「私が受注したものはすべてタイミングが良かったものに限られます」でした。しかし実際には、チラシ・名刺・ポスターなどのクリエイティブ、動画編集、リスティング広告とLP、SNS運用代行まで提供できる状態にありました。「自分の能力でできることって別にホームページ制作だけじゃなかったんですね、もともと」——これが振り返っての結論です。やるべきことは3つです。できることを調べれば対応できる範囲まで含めて棚卸しすること。メニューを先に出さず、相手の状況と課題を聞く順番に変えること。そして小さくギブして紹介を取りに行き、困ったときに丸ごと引き受けられる相手として認識されること。商談の数が足りないと感じているなら、営業力を上げる前に、まず自分が持っている引き出しの数を数え直すところから始めてください。
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